経営学のファイナンスにおける「リスク」の定義
ファイナンスで利用されるリスクの意味は、日常用語として使われるリスクとは異なり、リスクとは予見できない「不確実性」のことを意味しています。
以下の3つのケースを考えてみましょう。いずれのケースが最もリスクが高いと判断されるでしょうか。
ケース1 | A社が新商品を発売することを明日発表するという情報を入手した。現在のA社の株価は100円である。 |
ケース2 | B社の製品に対する規制が強化されることを、明日、規制当局が発表するという情報を入手した。現在、B社の価格は100円である。 |
ケース3 | C社は優良企業で、経営手法を専門家に評価されている。アナリストは現在のC社の株価100円は割安だと判断している。 |
いずれも入手した情報が確実であるとした場合、この中で最もリスクが高いのは、ケース3という判断になります。
なぜならば、ケース1とケース2については、それぞれ、株を買う、株を売ることによりかなりの確度で利益を出すことができるからです。
ファイナンスの世界ではケース2のように値段が下がることがリスクではなく、あくまで不確実性を意味しています。
国債と株式のリスクとリターン
続いて、国債と株式に投資することを考えてみます。
国債は期待リターン1%、株式は期待リターン5%であるとした際に、1年後にあなたが受け取る実際リターンの結果はどうなるでしょうか。
国債は、1年後の実際リターンは1%であり、期待リターンと一致するでしょう(リスク=ゼロ)。
株式は、5%の期待リターンであっても、1年後の実際リターンは、もしかしたら期待を上回る7%であるかもしれないし、逆に-5%であるかもしれません(リスク=大きい)。
期待リターン | 実際リターン | |
国債 | 1% | 1% |
株式 | 5% | ?% |
リスクは、期待リターンを中心とした実際リターンの分布であり、不確実性が大きいほどリターンの振れ幅も大きくなります。
リスクの分類 ユニークリスクとシステマティックリスク
最後にリスクの種類について確認をしておきます。
りすくにはコントロール可能なユニークリスクと、コントロールできないシステマティックリスクがあります。
例えば、産業機械業界に投資をすることを考えます。そこには、K社、Y社、I社の大手企業が存在する業界を考えます。
ユニークリスク
- 品質不良による出荷停止
- 工場事故による操業停止など
品質の不良や工場のトラブルによる事象はよく起こりうることですが、これらは業界大手複数社の株式を保有するなどのポートフォリオを組むことで回避することができます。
K社:50%、Y社:30%、I社:20%などのようにです。
例えば、K社の工場でプレス加工機械にはさまれ従業員の死亡事故が発生したとします。その場合、事故原因の究明や安全確認が終わるまで工場を停止せざるを得ず(5日間程度)、業績や株価にも影響がでます。
K社単体で見れば株価は下がりますが、一方で、Y社やI社の業績が好調であれば、下落した分を相殺することが可能です。
システマティックリスク
- 原油価格の高騰
- 銀行金利の上昇など
産業全体に関するリスクに対してはポートフォリオを組んでいても回避をすることができないものになります。
そのため、投資家が真に負うべきリスクということになります。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
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