MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。
今回は、第3章 演習問題②を取り上げています。
第3章 価値実現のマネジメント 演習問題②
インターネットをはじめとするIT(情報技術)の発展は、流通チャネルにどのような影響を与えているかを検討しなさい。
出所:『ゼミナール マーケティング入門 第2版』
解答例
生産者は自社の製品・サービスを販売する際に、卸売業者・小売業者を利用した商流と物流が一致しているルートが一般的であったが(商物一致)、ITの発展により、商流と物流が分離した販売ルートが確立され(商物分離)、効率的に販売することが可能になってきていると考える。
商物分離が可能になった背景としては、物流を支える情報システムの登場である。これまで業種別などでまとまりのなかった商品の受発注、保管、配送などの物流活動を正確かつ効率的に実施できる情報システムが構築されたことが重要である。
商物分離によるメリットは、1.コスト削減、2.在庫管理の最適化へ寄与、3.本業への注力が可能になる、の3つが考えられる。
- コスト削減について
従来、営業費用の一環として計上されていた物流費を分けて把握することで物流経費を見直すことができるようになり、適正なコスト水準とすることが可能になると考えられる。
また、受発注など人手を介して紙ベースで対応していた業務をシステム化することで間違いを減らすことや業務全体での省力化が可能になると考えている。 - 在庫管理の最適化への寄与
情報システムを介してリアルタイムに集約されたモノの動きや在庫数量、在庫回転率や滞留期間などを正確に数値的に把握することができ、販売状況に応じた出荷、生産計画への良質なインプットとすることができると考えられる。 - 本業への注力が可能になる
一般的に物流業務は周辺業務とみなされることが多く、人手不足などで経営資源が限られる場合は優先してアウトソーシングを検討する領域である。物流業務を外注し、人員を商品の販路開拓のための営業活動や商品説明、あるいは新製品の開発などのコア業務に投入することが可能になる。
思考の軌跡
流通チャネルにIT(情報技術)が与える影響、と問われた際に真っ先に思い浮かぶのはインターネットを介した通信販売などであると思われる。身近なためイメージしやすいが、今回の解答では、そのような通販ではなく、商物分離の物流という観点での記載をした。なお、インターネット通販もAmazonやYahooなどのプラットフォームをはじめとする情報技術や物流という観点で、商物分離に類似する部分もあると考えている。
生産者から卸売業者、小売業者と流通する過程では、各業者間で、分散化された受発注などがされているが、これらが配送センターの活用や統合的な情報システムの登場により大きく変わってきている。以下にコンビニのセブンイレブンの事例のポイントを記載する。
セブンイレブンでは、加工食品、菓子、飲料、日配品など様々なものを扱っているが、提携業者にて生産された製品は一旦、物流センターに運び込まれ、必要な商品を、必要な時にまとめて店舗に納品している。これを支える店舗システムが構築されており、POSレジスター(販売データの収集)や ST;スキャナー・ターミナル(検品や陳列状況の把握)、GOT;グラフィック・オーダー・ターミナル(発注システム)、SC;ストア・コンピュータ(バックルーム用)らが連携して効率的な業務支援をしている。
この他、情報システムという観点では、WMS;Warehouse Management Systemという倉庫管理システムがベンダーから提供されており、物流業務の効率化に貢献している。具体的なソリューションについては、各自ご確認をいただけるとよいと思う。
他の問題は以下からご覧ください。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
参考文献
セブンイレブンジャパン
https://www.sej.co.jp/company/aboutsej/distribution.html
コメント