MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。
今回は、第2章 演習問題④を取り上げています。
第2章 価値形成のマネジメント 演習問題④
薄利多売が成立するための条件について検討しなさい。
出所:『ゼミナール マーケティング入門 第2版』
解答例
薄利多売とは、製品・サービス1個当たりの利益を少なくして、数量を多く販売することで全体の利益を多くすること、と定義され、販売価格の低さと販売数量の多さに起因し、新規顧客の獲得や市場での知名度を高めることにつながるため、特に市場浸透・拡大を目指す製品・サービスでは効果が大きいと考えられる。
薄利多売が成立する条件には、製品・サービスの観点では、需要の価格弾力性が高いこと、実行するために企業に求められるケイパビリティの観点で、オペレーション能力が求められる。
- 製品・サービスの観点
需要の価格弾力性が高い状況とは、製品・サービスの価格を引き下げれば、その分、製品・サービスの販売量が増加するということである。価格弾力性に影響を与える要因は、代替製品・サービスが市場に数多く存在することである。代替製品・サービスが多く存在する場合、価格を引き下げた際に他の製品・サービスを選択していた消費者を獲得することができ、販売量を増やすことができるためである(それ以外にも、価格弾力性は販売する時期や顧客特性などにも影響を受ける)。また、販売数量が拡大することにより、規模の経済が働き、一単位当たりの生産コストが低減されることが期待されるため、固定費比率が高いと、より効果を享受することができる。 - 企業ケイパビリティの観点
値下げを実施した際に、値下げ前の売上規模を維持するには、その分、販売数量を確保する必要がある。販売数量の増加に伴い、販売にかかるオペレーション、例えば、仕入、製造、在庫、発送、接客や提供、などが増加し、それに伴う人権費などのコストも加算することが想定される。よって、企業として、オペレーションの増加などに対応できることが求められる。
思考の軌跡
薄利多売が成立するための条件を提供する製品・サービスの観点と、それを実現するための企業のケイパビリティの観点で整理をした。製品・サービスの観点では、値下げをした分、顧客が獲得できるという需要の価格弾力性が高いことに収れんされる。一方、企業のケイパビリティの観点では、販売に際してのオペレーションをポイントに挙げた。教科書の例にもマクドナルドなどが触れられているのでイメージをつかんでおきたい。
また、以下の図の通り利益の額と販売数量の多少でマトリックスで整理をしてみた。
①薄利少売は製品・サービスの提供開始時などで市場浸透を図る時期にとられるモデルと理解している。新製品・サービスについてはトライアル的な提供なども含めてディスカウントされた価格設定となっており、また、顧客の認知度は低い。
②厚利少売は、サービスの有用性が限られた顧客の中で認知され始めると適正な価格での提供が可能になり、高い利益率が確保できると考えている。
③厚利多売は、②からビジネス規模を拡大しようとする際に一時的に表れるモデルと考えている。販売数量の拡大を志向すると、固定費(生産設備、倉庫など)も大きく増えることになるため。本質的には、このポジションを維持できることが理想であるが、中途半端なビジネス規模となると、大手との競争に勝てない。
④上記の規模拡大を目指した結果、薄利多売のポジションに落ち着いてくるものと想定している。
モデルの変遷については整理をしながら、考えているところであり、不整合な個所などお気づきの点があればコメントをいただきたい。
他の問題は以下からご覧ください。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
コメント