MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。
今回は、第5章 演習問題⑤を取り上げています。
第3章 マーケティング資源の配分 演習問題⑤
製品ポートフォリオ管理の導入によって企業はどのような社内調整のメリットを得ることができるかを検討しなさい
出所:『ゼミナールマーケティング入門 第2版』
以下ではプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント、製品ポートフォリオ管理をPPMと表記します。
解答例
PPMにより、長期と短期の経営目標の実現を目指すことができると考えます。
以下で順に確認をします
PPMに至るまでの企業内の指標管理の変遷
まず、企業内の指標管理の変遷を確認すると、初期的にはPL指標管理が中心であり、その後、ROE指標管理へ遷移し、さらに進むとポートフォリオ管理となります。
以下で、各ステージの概要を確認します。
PL指標管理
多くの企業が管理しているのは売上高や利益額でしょう。
集計のしやすさなどもあり、売上高や利益額至上主義ともいえる状況を生み出し、資本効率性は度外視されていることが多い状況です。
ROE・ROIC指標管理
2014年に経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書、いわゆる伊藤レポートにて、ROEをの目標水準を8%と掲げたことが契機となり、ROEに着目をする企業が増加しました。
全社としての効率性を算出することができるものの、事業部ごとの効率性を把握することができないため、さらに高度な管理の実現のために、新たな指標としてROICも導入され始めています。
ポートフォリオ管理
各事業で効率性指標も把握できるようになったことで、事業を多面的に評価できるようになり、ポートフォリオのように管理することができるようになった状態です。
この状態では、自社にとって本当のコア事業がなにかを考えて、事業の入れ替え等を行っていくことも可能になってきます。また、ROE・ROICツリーを分解したKPIを現場に設定するなど高度な経営管理が実現されています。
PPMで実現される社内調整上のメリット
事業のフェーズや効率性を含めた評価ができるようになったことで、事業ごとの比較がより公正にできるようになりました。
その結果として、長期と短期の経営目標の実現を目指すことができるようになります。
長期と短期の経営目標の実現
PPMは各事業の状況を把握し、事業に応じた目標を設定することができるので、直近での企業の成長と、将来の成長のバランスをとることができるようになります。
例えば、「金のなる木」から利益を獲得し、その資金を持って、「スター」を次の「金のなる木」に育てる。あるいは、「問題児」を「スター」の地位を獲得できるようにする、などです。
売上高や効率性の指標であると、すべてを同一の尺度で判断してしまうことにつながりかねません。
例えば、投資が必要だが、売上の上がらない「問題児」は、投資をすることで将来的な「スター」や「金のなる木」に育てていく必要がありますが(=長期的な視点)、既に事業として成熟している「金のなる木」の関係者などからは、利益額を最大化するような厳しい要求(=短期的な視点)を受けることもあるでしょう。
長期的な視点と短期的な視点をバランスさせることがPPMのメリットの一つでと言えます。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
思考の軌跡
まず、PPMに至るまでの企業のKPI設定状況などを簡単に整理しました。
そのうえで、PPMの社内調整上のメリットを整理しました。
本書では、以下の4つがあげられていたが、
- 成長と資金管理のバランスをとる
- 長期と短期の経営目標を調和させる
- 変化に対応する
- 現場と本社の健全な対話を促す
内容をみると「経営目標を調和させる」が一番の上位概念だと感じ、成長と資金管理のバランスや変化への対応、現場と本社の対話らとは少し粒度の異なる内容と感じたので、それら3つは経営目標を実現するための補足的な要素としてあえて記載をしませんでした。
なお、以下の記事にもPPMがどのように役立つのかを記載しています。
他の問題は以下からご覧ください。
参考情報
今回の演習問題、またその内容はこちらの書籍にまとめられております。
本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。
また、本記事の画像はPowerPointで作成しており、操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。
参考文献
伊藤レポート
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf
伊藤レポート2.0
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/itoreport2.0.pdf
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