MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。
今回は、第2章 演習問題①を取り上げています。
第2章 価値形成のマネジメント 演習問題①
ペットボトルの登場でさまざまな製品の便益がどのように変化したか、を検討しなさい。
出所:『ゼミナールマーケティング入門 第2版』
解答例
ペットボトルの便益の束、すなわち、認知、取得、使用、廃棄の局面において、主に利用者にとっての便益を考えます。
なお、ペットボトルの比較対象としては、飲料容器として利用されている紙パックや瓶・かんなどがあありますが、今回は紙パックを主要な比較対象として検討しました。
ペットボトルの主要な便益(紙パックとの比較)
認知
ペットボトルは、容器が透明なため、中身がわかりやすい、加工が容易なためデザインやサイズが豊富、また食品衛生法の規格に適合し衛生的といった点があげられます。
一方で、紙パックの便益は、パックに直接、印刷することで情報を伝達できる、加工が容易なため容量のタイプが豊富、遮光性による、品質を保持でき、衛生的であるといった点があげられます。
取得
- 価格
ペットボトルは、容器の価格は約20円(500mlの容器代が15円、キャップが3円、ラベルに2円程度と見込まれる)です。
一方で、紙パックは、1つ10円程度であるので、紙パックの方が安価です。
- 流通
ペットボトルは、軽くて丈夫なため流通が容易です。
一方で、紙パックも、ケースによる専用輸送がかでき、輸送効率がよいとされています。
使用(開栓後)
ペットボトルは、ボトルにキャップができるため、開栓後も持ち運びや短期の保存が可能です。
一方で、紙パックは軽量でコンパクトですが、開栓後の持ち運びには不向きです。
廃棄
ペットボトルは、リサイクルが可能で、街中でもごみ箱が分かれており廃棄が容易です。リサイクルの体制が整っていると言えるでしょう。
一方で、紙パックは、リサイクルは可能ですが、街中では燃えるゴミとして処分されているケースが多いでしょう。リサイクルの体制は、家庭での消費などでは整っていると言えます。
ペットボトル特有の便益
この中で、紙パックと比べて最も便益が大きいのは「使用」の局面における、短期の保持であると考えられます。
ペットボトルは開栓後にキャップを占めることで、カバンに入れて持ち運ぶことなどが可能です。一方、紙パック(や瓶・かんなど)は一度、開栓をしてしまうとフタをすることができず持ち運びは難しいでしょう。
また、ペットボトルの登場により、他の容器も価値訴求の必要性が強まっています。
例えば、瓶は非日常感や特別感、本格さ、高級感などの価値として訴求することができます。あるいは、かんは冷やした時のひやひや感などを価値として訴求をしています。
ペットボトルの登場により、消費者の受ける便益が変わり、既存容器の価値訴求の仕方を変えるなどの影響が生じていると考えられます。
思考の軌跡
「さまざまな製品」の便益の変化を、容器に入れる飲料そのものではなく、ペットボトル登場以前に利用されていた飲料容器と理解をして整理を進めました(具体的には、かん、瓶そして紙パックです)。
飲料そのものの違いは、着色されたカラフルなスポーツ飲料が消費者に対して認知されやすい、ビールなどの飲料ではペットボトルの長期保存に向かない(酸化してしまうため)ものがあるなどの特徴はあるものの、概ね既存容器と変わらないと考えるためです。
解答の中では、紙パックを整理しましたが、各種の特徴を考えると瓶の方が、違いが際立ったかもしれません。時間があればこれらの容器の特徴についても整理をして、比較してみたいです。
また、ペットボトルによる便益の変化を検討するのに加え、ペットボトルの登場により既存容器がどのような変化に迫られたか、どのような取り組みをいているのかについても簡単に調べました。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
関連情報
今回の演習問題、またその内容はこちらの書籍にまとめられております。
本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。
また、本記事の画像はPowerPointで作成しております。PowerPoint操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。
参考文献
ゼミナールマーケティング入門ゼミナールマーケティング入門 第2版ゼミナールマーケティング入門
PETボトルリサイクル推進協議会
https://www.petbottle-rec.gr.jp/basic/merit.html
日本製紙グループ
https://www.nipponpapergroup.com/about/business/container/more_recycle/
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