5つの競争要因(ファイブフォース)分析だけに基づく戦略選択のパフォーマンス【解答例】ーバーニーの企業戦略論 上(旧版) 第3章 演習問題3

企業戦略論

MBAの授業でよく参考書として取り上げられているジェイ・B・バーニーの『企業戦略論 上 基本編』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、企業戦略論 上 第3章 演習問題3を取り上げています。

Amazon.co.jp

なお、21年12月に新版が出たようです。

Amazon.co.jp

第3章 演習問題3

もし、競合企業同士が、脅威を分析する5つの競争要因モデルだけに基づいて、それぞれの戦略を選択したならば、それらの企業の予測されるパフォーマンスのレベルはどうなるだろうか。それはなぜか。

出所:『企業戦略論【上】基本編』

以下では5つの競争要因モデルはファイブフォース分析と記載する。

解答例

ファイブフォース分析だけに基づいて戦略を選択した場合の企業パフォーマンスを精緻に予測することは困難であり、「標準を上回るパフォーマンス」、「標準を下回るパフォーマンス」のいずれも取りうる可能性があると考える。

戦略に対する問い

まず、競争優位を生み出すための戦略が備えるべき属性を整理すると、外部環境における脅威を無力化し、機会と自社の強みを活用すると同時に、自社組織の持つ弱みを克服、回避することが求められる。

  • 企業にとって外部環境の脅威とは何であり、その脅威はどのようにして無力化できるか
  • 企業にとって外部環境における機会とは何であり、その機会はどのようにすれば活用できるか
  • 企業の強みとは何であり、その強みはどうすれば活用できるか
  • 企業の弱みとは何であり、その弱みはどのようにすれば回避もしくは克服できるか

ファイブフォース分析(5つの競争要因モデル)

同分析は、外部環境の脅威の分析に用いられるものであり、その企業が属する業界全体の経済的魅力度を、業界内の競合の脅威、新規参入の脅威、供給者の交渉力、購入者の交渉力、代替品の脅威の5つの視点から評価する。

同業界に属する企業にとって、供給者の脅威、購入者の脅威は、これまでの取引関係や地理的な事情などが影響する場合もあり、違いが出る可能性もあると考えられるが、新規参入の脅威、代替品の脅威、業界内の競合の脅威は類似的な内容となる見込みが高い。

ファイブフォース分析は、戦略に対する問いの1つの要素である外部環境の脅威を分析するものであり、これだけに基づいて戦略を選択した場合には、そのほかの外部環境の機会や内部環境としての自社の強みや弱みなどのケイパビリティを考慮していないため、パフォーマンスを評価するための分析としては不十分であると考えるからである。

戦略に対する問いと5つの競争要因モデルのカバー範囲

具体例の検証

最後に、ファイブフォース分析だけに基づいた戦略を選択した場合に、標準を上回るパフォーマンスを生み出す例を考えてみる。

例えば、業界内のリーダー企業であれば、自社ケイパビリティが総じて他社よりも優位であることが見込まれるため、フルライン戦略により、業界内の機会へ全面的なアクセスをしていく、豊富なリソースを基に更なる自社の強みを構築する、弱みを克服することができる可能性があるなどである。

いずれにせよ、より精緻なパフォーマンスの評価においては、機会の活用や自社の強み・弱みを捉えた戦略を選択する必要があるのである。

思考の軌跡

まず、パフォーマンスの概念と、それを生み出すための戦略に対する問い、そしてファイブフォース分析の整理をした。

その上で、戦略に対する問いとファイブフォース分析の概念の関係性を整理した。これらは同階層の概念ではなく、戦略に対する問いの1つである脅威に対する分析として5つの競争要因があることを理解した。

最後に、ファイブフォース分析のみを考慮して戦略を選ぶことで、標準を上回る(下回る)パフォーマンスを上げることがある状況について検討した。外部環境の脅威の分析は、業界内のプレイヤーには同様の結果となることから、自社ケイパビリティを分析し、機会を活用する戦略を選ぶことが企業パフォーマンスに影響をあたえるのである。

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました