【解答例】衰退業界における戦略と成功事例ー企業戦略論 上 第4章 演習問題1ー

MBAの授業でよく参考書として取り上げられているジェイ・B・バーニーの『企業戦略論』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、企業戦略論 上 第4章 演習問題1を取り上げています。

企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続
戦略の本質は何か。競争優位とは何か。企業の成功をいかに持続させるか。競争戦略を超えた戦略論の金字塔がついに完成。 欧米MBA校の人気テキストがついに翻訳完成。従来の競争戦略を中心とした戦略論に、リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく戦略論)の概念を統合させた初のテキストであり、企業の目的から戦略の本質を明確に定義...

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第4章 演習問題1

衰退業界における4つの機会のなかから、企業はどれを選択するべきであろうか。

出所:『企業戦略論【上】基本編』

解答例

衰退業界での戦略オプション

本書では、衰退業界における機会・とるべき戦略オプションについて、①市場リーダーシップ戦略、②ニッチ戦略、③収穫戦略、④撤退戦略の4つを示している。これらは、衰退する業界で事業を続けていく意思があるか、という「事業継続への意思」と、利益を生み出している現在の自社の「市場ポジション」という二軸で整理されたものと考えることができる。

衰退業界における機会と戦略オプション

従って、示された4つの戦略オプションのうちどれを選択するべきかという問いは、自社の市場ポジションと事業継続への意思から決定されるものと考える。以下に各戦略オプションについて、戦略の内容と具体的に企業がとるべき手法を整理をする。

市場リーダーシップ戦略

他企業の市場退出を促し、業界再編後の効率的な事業活動により利益獲得を目指す戦略。

具体的に企業が取るべき手法としては、競合企業の製品ラインを買収後に生産を縮小するなど、自社が業界に残りリーダー企業であり続けるという強い意志を示すこと(=シグナリング)などが考えられる。

ニッチ戦略

市場の特定のあるセグメントに集中し、収益を上げることを目指す戦略。

具体的に企業が取るべき手法としては、事業範囲を狭く絞り、コスト低減か差別化を図るなどが考えられる。

収穫戦略

長期間に亘り、システマティックかつ段階的に、利益を収穫しながら、業界からの退出を目指す戦略。

具体的に企業が取るべき手法としては、ライン・配送網の縮小、サービスの質・利益率の低い顧客の切り捨て、最終的には事業売却・停止などが考えられる。概念としては単純であるが、実際の実行に向けては、これまでの企業活動を捨て去る、真逆のことをする必要があるため、従業員のリテンションプランなどの検討も必要になる。

撤退戦略

非常に短期間で業界から退出を目指す戦略。

具体的に企業が取るべき手法としては、素早い事業売却・停止などが考えられる。業界の衰退の兆候がはっきりしてきた場合、収穫できる経済価値が多くないことが予想されるためである。

衰退業界でのニッチ戦略の事例

例えば、自社が市場ポジションでフォロワー(市場でのトップシェアを占めていない)であるものの、引き続き、この業界で事業を続けていきたいと考える場合に取るべき戦略はニッチ戦略となる。坂本(2011)の研究では、製紙業の北越紀州製紙のニッチ戦略としての技術戦略について以下のように示している。

衰退業界としての製紙業 ※各パラグラフのタイトルのみ筆者補足
日本の製紙生産量(内需)は近年横ばい状態であり、2008年の世界同時不況以降は減産傾向にあることが分かる。製紙業界で生産されているものには、印刷・情報用紙、段ボール原紙、新聞用紙、紙器用板紙、衛生用紙、包装用紙などがあるが、近年においては衛生用紙のみ生産量が横ばいで、残りは全て減産傾向という厳しい状況にある。

製紙会社の市場ポジション
日本の製紙会社を見ると、売上高では王子製紙と日本製紙グループ本社の2社が抜きんでており、あとは中堅企業が並んでいる状況にある(中略)。

日本の製紙会社の2010年度売上 (中略) 上位10社とは、王子製紙(1位)、日本製紙グループ本社(2位)、レンゴー(3位)、大王製紙(4位)、北越紀州製紙(5位) (中略) である。

北越紀州製紙の技術開発への集中投資
技術戦略についても成果を出すためには投資のポイントを明確にして集中投資することが重要である。

(中略)

洋紙・板紙のなかでも特に印刷紙と白板紙について競争力を高めるため、その品質改善とコスト削減、および付加価値の研究開発に毎年10億円が集中的に投資されている。

同社は、衰退業界の中で売上は中規模に位置しながらも、長期的に一定額の投資(=事業継続への明確な意思)を行い続けている。研究開発の対象とする紙の種類を絞り、集中することで、衰退業界においても成長傾向を示している。

思考の軌跡

衰退業界に示された機会・戦略オプションがどのような軸で整理されるかを考えた。横軸の市場ポジションは、市場の立ち位置として取るべき戦略が異なることは一般的なので異論は少ないと思う。縦軸の事業継続への意思は事業を続けるか、業界から退出をするかというポイントから名前を付けたが、もう少しよい言葉があればアドバイスをいただきたい。

4つの戦略オプションについて、多くの場合はニッチ戦略か撤退戦略となるため(リーダー企業は業界に数社のみのため)、今回はニッチ戦略についての考察を深めた。坂本(2011)の研究に製紙業界の詳しい考察があるため、そちらもご一読いただければと思う。

 

他の問題は以下からご覧ください。

【まとめ】企業戦略論 演習問題の解答例
MBAの授業でよく参考書として取り上げられている『企業戦略論』 の演習問題を考えていきます。まとめページになります。

 

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

参考文献

成熟・衰退市場にあるBtoB型製造業の技術イノベーシ ョンによる成長戦略 : 製紙業界における成長企業の戦略(坂本,茂義 ; 2011)https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/10083/1/kouen26_118.pdf

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