【解答例】戦略策定のプロセスにおいて外部環境と内部環境をいずれを優先すべきかー企業戦略論 上 第5章 演習問題1ー

MBAの授業でよく参考書として取り上げられているジェイ・B・バーニーの『企業戦略論』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、企業戦略論 上 第5章 演習問題1を取り上げています。

企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続
戦略の本質は何か。競争優位とは何か。企業の成功をいかに持続させるか。競争戦略を超えた戦略論の金字塔がついに完成。 欧米MBA校の人気テキストがついに翻訳完成。従来の競争戦略を中心とした戦略論に、リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく戦略論)の概念を統合させた初のテキストであり、企業の目的から戦略の本質を明確に定義...

なお、21年12月に新版が出たようです。

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第5章 企業の強みと弱み 演習問題1

次の戦略策定方法のうち、どちらが経済的利益を生み出す可能性が高いだろうか。

  1. まず企業環境の機会と脅威を評価してから、次にその機会を活用し脅威を無力化するような経営資源とケイパビリティを開発する。
  2. まず企業内部の経営資源とケイパビリティを評価してから、次にそれを活用できる業界を探す。

どちらの方法を選ぶか、その理由も説明せよ。

出所:『企業戦略論【上】基本編』

解答例

(b)を選択する。

ポーターのポジショニング論とバーニーのケイパビリティ論のいずれが持続的な競争優位の構築への寄与度が高いかという問いへと読み替えて解答を考える。

ポジショニング論について

ポジショニング論は、SCPモデルに表されるように、産業構造が企業行動を規定し、パフォーマンスにつながるという考えであり、業界内でのポジショニングを重視している。また、企業が自らの行動により、産業内部で自社が直面する産業構造を主体的に変えうることを示している。

ケイパビリティ論について

一方で、ケイパビリティについての競争優位に重要なのは、ポジショニングよりも、企業の持つ経営資源をどのように活用するかというリソース・ベースト・ビュー(RBV)に基づくものである。

企業内部の経営資源とケイパビリティの分析の手法を以下に整理をする。RBVの考えでは、企業ごとに異質で複製に多額の費用がかかる経営資源(財務資本、物的資本、人的資本、組織資本)に着目する。

バリューチェーン分析

競争優位を生む可能性のある経営資源の分析に当たっては、バリューチェーン分析が一つの手法である。

同一の製品群を製造する企業であってもバリューチェーン上のどの活動に注力するかは、その企業がそれまでどのような経営資源を築いてきたかに影響を受けるためである。

また、同一のバリューチェーン上で同じ活動の組み合わせを選択したとしても、それらの企業が違う方法で取り組み、結果として全く異なる経営資源を蓄積することがありうる。

VRIOフレームワーク

経営資源が強みとなるのか、弱みのとなるのかについての分析するフレームワークとして、VRIOフレームワークがある。

  • Value:経済価値に関する問い
    その企業の保有する経営資源やケイパビリティは、外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか
  • Rarity:稀少性に関する問い
    その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の企業か
  • Inimitability:模倣困難性に関する問い
    その経営資源を保有していない企業は、獲得あるいは開発する際、コスト上の不利に直面するか
  • Organization:組織に関する問い
    企業が保有する、価値があり稀少で模倣コストの大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているか

価値があり、稀少で、模倣困難の経営資源とケイパビリティを保有していることが持続的な競争優位の源泉となる。

競争優位性への寄与度の検証

ポジショニング論とケイパビリティ論のいずれが持続的な競争優位の構築への寄与度が高いかという論争については、リチャード・ルメルト(1991年)が実証研究を行っている。

その結果、企業業績の約15%が業界ごとの要素(業界構造など)=ポジショニング論の寄与、約45%が企業固有の要素(経営者の能力、保有技術など)=ケイパビリティ論によって決定されることが明らかにされた。

上記の先行研究の結果から、(b)の経営資源を重視する戦略策定方法がよいと考える。

思考の軌跡

今回の解答では、ポジショニング論とケイパビリティ論のいずれが持続的な競争優位の構築への寄与度が高いか、という問いへと読み替えて解答をした。

業界のポジションについては以下にもまとめています。

しかし、これは貢献度の割合を述べているだけで、その検討の順番に応えるものとしては十分ではないと思われるため、以後ではより検討の順番に焦点を当てて検討を進める。

世の中に戦略策定のためのステップ(よくある一例として、目的・定量目標の設定、現状分析、方向性の策定、フィジビリティスタディ、施策を実行)やフレームワーク(PEST、3Cなど)は数多くあるものの、外部環境分析と経営資源とケイパビリティの内部環境分析のいずれの順で実施するかの問いに応えられる情報は多くはない。

戦略策定のメソドロジーとして、モニターデロイト(前身のモニターグループはポーターが創設)のStrategic Choice Cascadeが確立されている。そこでは、戦略検討プロセスとして、戦略は何を目指すかという大義(Aspiration)のもと、戦うべき市場を選び(Where to play)、どう勝ち抜くか(How to win)を検討する。そしてその勝ち抜く術を実現するためのケイパビリティとマネジメントシステムを確立する(Capability/Management system)ことが重要であると示している。

モニターデロイトの戦略策定のメソドロジー

(『SDGsが問いかける経営の未来』から引用)

上記の検討ステップは(a)に合致するべきもので、外部環境の機会と脅威を評価することが、戦うべき市場を選ぶことであり、機会を活用し脅威を無力化するような経営資源とケイパビリティを開発することが、どう勝ち抜くか、新たにどんな能力を備えるか、どのようなマネジメントシステムが必要かの問い対応している。

上記の検討ステップは、戦略が企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)と整合するためのものであり、既存の経営資源をベースとした戦略策定をした場合、現状できることの積み上げベースでの検討を避けることにもつながるであろう。

解答例と解説では異なる検討順がいずれも相応の合理的な理由があると考えられる。読んでいただいた方の意見もぜひとも聞いてみたい。

 

他の問題は以下からご覧ください。

【まとめ】企業戦略論 演習問題の解答例
MBAの授業でよく参考書として取り上げられている『企業戦略論』 の演習問題を考えていきます。まとめページになります。

 

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

参考文献

モニターデロイトSDGsが問いかける経営の未来
https://www.dhbr.net/articles/-/5702?page=3

リチャード・ルメルト(1991年)『How Much Does Industry Matter?』

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