VRIO分析のフレームワークを詳細解説

企業戦略論

MBAの授業でよく参考書として取り上げられているジェイ・B・バーニーの『企業戦略論 上 基本編』にて説明されているVRIOフレームワークについて解説していきます。

ケイパビリティ論について

ケイパビリティ論は、企業の持つ経営資源をどのように活用するかというリソース・ベースト・ビュー(RBV)に基づく考え方です。

RBVは、以下の前提に基づいています。

  • 経営資源の異質性
    企業は資源の集合体であり、企業ごとに異なっている。そのため、同じような活動をしたとしてもパフォーマンスは異なる

  • 経営資源の固着性
    経営資源には、複製コストが非常に大きかったり、その供給が非弾力的なものがあり、企業固有の経営資源は持続する

4つの経営資源

企業ごとに、異質で、複製に多額の費用がかかる経営資源、すなわち、財務資本、物的資本、人的資本、組織資本に着目します。

財務資本

企業が戦略を策定・実行する上で用いられる、あらゆる金銭的資源のことです。

具体例としては、起業家の出資金、株主からの出資、銀行からの借入、事業による利益などがあります。

物的資本

企業が用いる、あらゆる物理的資源のことです。

具体例としては、工場や生産設備(コンピューター、産業用ロボット、自動倉庫)はもちろんのこと、立地、原材料へのアクセスなどがあります。

人的資本

個人の属性である人的資源のことです。

具体例としては、個人のマネージャーや従業員が受けた人的資源育成訓練、あるいはその仕事経験、判断力、知能、人脈、考察力などがあります。

有名な起業家や経営幹部に注目されることも多いですが、オペレーションを遂行していくには社員一人ひとりの能力も重要です。

組織資本

企業の属性である資源のことです。

具体例としては、企業の公式な指揮命令系統、公式・非公式を問わない経営企画、経営管理、調整システム、企業文化や世間的評判、企業内の集団同士の非公式な関係、企業と外部集団と非公式な関係などがあります。

VRIOフレームワーク

経営資源の分析の手法として、VRIOフレームワークがあります。

VRIOフレームワーク
価値があり、稀少で、模倣困難な経営資源を保有し、それを活かす組織体制が整っていることが、持続的な競争優位の源泉となる

価値があり、稀少で、模倣困難な経営資源を保有し、それを活かす組織体制があることが持続的な競争優位の源泉となります。

以下で、それぞれの項目を整理していきます。

Value:経済価値に関する問い

その企業の保有する経営資源やケイパビリティは、外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか?

この判断はなかなか難しい部分もありますが、経営資源やケイパビリティを用いたことによる売上の増加やコストの低下が効果として現れることが多いとされています。

バリューチェーン分析

競争優位を生む可能性のある経営資源の分析に当たっては、バリューチェーン分析があります。

同一の製品群を製造する企業であっても、バリューチェーン上のどの活動に注力するかは、その企業がそれまでどのような経営資源を築いてきたかに影響を受けるためです。

また、同一のバリューチェーン上で同じ活動の組み合わせを選択したとしても、それらの企業が違う方法で取り組み、結果として全く異なる経営資源を蓄積することがありえるとされています。

Rarity:稀少性に関する問い

現在、その経営資源をコントロールしているのは、ごく少数の企業か?

多くの場合、価値はあるのもの、そこまで稀少性の高くない経営資源を保有しており、それは一時的な競争優位の獲得あるいは競争均衡ににつながっています。

例えば、備品としてのPCなどがある。誰しもが業務上で利用しているもので、価値はあるが、稀少性は低いものの、保有しなければ競争劣位に陥ってしまう。

どの程度の稀少性があれば、競争優位を生むかは状況により異なるため、業界や競合の分析などが必要になります。

Inimitability:模倣困難性に関する問い

その経営資源を保有していない企業は、獲得あるいは開発する際、コスト上の不利に直面するか?

模倣の形態

模倣には以下の二形態が存在します。

  • 直接的複製
  • 代替

一般的には、まずは直接的な複製を試みますが、複製にかかるコストが高い場合、他の経営資源による代替を狙うとされています。

模倣コストが高くなる条件

経営資源を模倣する際のコストが高くなる要因としては以下があげられます。

  • 独自の歴史的条件
    いわゆる先行者利益に該当する内容です。

    経営資源獲得に際して、一度、その時点が過ぎてしまうと、その獲得に著しいコストがかかること(時間圧縮の不経済)や、あるプロセスの初期段階で起きたことが、その後の展開に大きな影響を与えること(経路依存性)が大きな要因とされています。

    具体例としては、戦前に栄えた財閥企業があるでしょう。例えば、三菱財閥は西南戦争にて軍事輸送を一気に引き受けたことで大きく成長しました。

  • 因果関係不明性
    経営資源と競争優位の因果関係を十分に把握できないこと、曖昧であることに起因します。

    チームワークや組織文化などの見えざる資産(=当然のもので気づかない)や資産ストックの相互関連性、資産集合の効率性、無数の小さな意思決などが要因とされています。

  • 社会的複雑性
    経営資源を体系的にコントロールすることが難しい複雑な社会現象に起因します。

    例えば、マネージャー同士の人間関係、企業の外部(サプライヤー)からの評判などがあります。これらを模倣しようとすると、物理的な技術の模倣に比べて非常に高いコストが必要になります。

  • 特許
    特許申請をすることで権利が保護されます。

    しかし、一方で申請時に情報を開示するため、短期的には直接的な模倣を防ぐことができるが、長期的には同等機能の技術による代替の可能性を増やすことになります。

    例えば、医薬品があげられます。特許期間中は大きな利益に貢献しますが(特許で保護され独占的な販売、あるいはライセンス契約による収益など)、特許期間が切れるとジェネリック医薬品のように安価な類似品が出回ることになります。

Organization:組織に関する問い

企業が保有する、価値があり稀少で模倣コストの大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているか?

先の組織的資本でも記載をしましたが、例えば以下のような要素があります。

  • 公式な指揮命令系統
  • 公式・非公式の経営管理システム
  • 報酬政策

通常これらの要素は単体では競争優位を生み出さないため、補完的経営資源と呼ばれますが、価値があり稀少で、模倣コストの大きい経営資源と組み合わさることで、大きな価値を発揮します。

VRIOフレームワーク活用事例

サウスウエスト航空や、ESPNなどの事例が詳細に解説されているので、本書もぜひご確認ください。

まとめ・RVBからの示唆

RBVやVRIOフレームワークの分析により、個別企業が競争優位を獲得できるか、その優位がどの程度持続するかを把握できるようになります。

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

参考情報

本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。

また、本記事の画像はPowerPointで作成しており、操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。

参考文献

企業戦略論 上 基本編

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