プッシュ戦略とプル戦略の違いのまとめ【解答例】 ーゼミナール マーケティング入門 第1章 演習問題②

ゼミナールマーケティング入門

MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、第1章 演習問題②を取り上げています。

第1章 市場をつくり出す企業活動 演習問題②

プッシュ戦略の採用が望ましいのは、企業がどのようなマーケティング環境に直面している場合かを検討しなさい。

出所:『ゼミナールマーケティング入門 第2版

解答例

プッシュ戦略とプル戦略の説明

プッシュ戦略 プル戦略 概要

プッシュ戦略は、川上の生産者が流通・小売業者に対して高マージンなどにより製品を押し込み(プッシュ)、取引を発生させることです。

生産者による活動は、主に流通・小売業者に対して、資金面の援助や製品の説明、販売方法の指導、リベートによる販売意欲を喚起するなどして自社製品やサービスを積極的に販売してもらうよう仕向ける戦略です。

一方で、プル戦略は、川上の生産者が直接、消費者に対して、マス広告などの販売促進活動を行い、川下から製品の指名買い(プル)を発生させることです。

広告や店頭活動により製品やサービスの魅力を訴えることで、購買意欲を刺激し、最終的には消費者が店舗に来店し、指名買いをするように仕向ける戦略です。

プッシュ戦略とプル戦略は対照的なマーケティング戦略であり、両者が適するマーケティング・ミックス上の特徴と具体的な手法について、簡単にまとめると下記の通りです。

プッシュ戦略とプル戦略の適合性

プッシュ戦略 プル戦略
生産者から主に流通・小売業者対象生産者から主に消費者
競合との差別化が不明確製品競合との差別化が明確
利益率が高い価格比較的安価
特定経路での流通流通製品が全国的に流通している
ブランドの認知度が低い(新商品などで顧客に説明が必要)プロモーションブランドの認知度が高い(積極的なセールスが不要)
A. 生産者による活動
・販売員の店舗への派遣
・リベートの提供
B. 流通・小売業者による活動
・訪問営業
・電話営業
・キャッチセールス など
具体的な手法販売促進活動
・テレビのCM、紙面の広告
・コンテンツマーケティング
・SNSで発信、広告、口コミ など
出所:日本リサーチセンター[販促概論3] プッシュ戦略/プル戦略』などを基に筆者作成

プッシュ戦略の有効性について

上記を踏まえると、プッシュ戦略が有効なマーケティング環境として、以下の状況が考えられます。

  • 製品・サービスの利益率は高いものの、特定の流通経路で販売されており、機能面で他社製品・サービスとの差別化ができていない
  • 新しい製品・サービスで商品説明必要など製品・サービスの認知度が低い

これらの特徴を持つ製品・サービスは大規模なマス広告を実施したとしても、顧客が製品・サービスの特長や、それによって得られる便益を十分に理解していないため、想定しているような反応を期待できません。

それよりも、顧客に対して対面などで直接、個別に働きかけ、製品・サービスについて詳しく説明をしていくことが効果的です。利益率が高い製品・サービスであることから、そのための人員等の販売促進費をかけたとしても、価値があると考えられます。

ただし、売り込み方に対して顧客が強引な印象を受けるとブランドイメージの低下につながるため、留意する必要があります。

最後に、簡単にプッシュ戦略の活用が有効な事例について確認をします。

まず、プッシュ戦略かプル戦略かと二項対立の関係ではなく、両者を併用したバランスのあるマーケティング戦略が重要であるという前提ですが、自動車の販売などは顧客へのプッシュが重要な身近な製品であると考えられます。

思考の軌跡

解答として、プッシュ・プル戦略を理解していることを示すために、それぞれをマーケティング・ミックス(4P)の視点で整理しました。

ポイントとしては、生産者から誰に対して仕向ける戦略なのかと、具体的にどのようなことをするのか、といった観点でまとめました。

併せて、プッシュ戦略については、具体的な手法として、生産者から流通・小売業者に対する施策と、流通・小売業が実施する顧客への直接的な施策があり、簡単に整理しました。

特に、近年は、プッシュ・プルの組み合わせが重要になっているとの言説もありますが、そのベースとなるプッシュ・プルの理解を深めるために、具体的な製品・サービスをイメージすると、さらに理解が深まると感じました(解答では具体的な製品・サービスの事例については省略した)。

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

関連情報

今回の演習問題、またその内容はこちらの書籍にまとめられております。

Amazon.co.jp

プッシュ戦略とプル戦略のバランスについて製品ライフサイクルを交えて追加の考察をしたので以下も併せてご確認ください。

本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。

また、本記事の画像はPowerPointで作成しております。PowerPoint操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。

参考文献

ゼミナールマーケティング入門 第2版

グロービスMBAマーケティング

日本リサーチセンター[販促概論3] プッシュ戦略/プル戦略
https://www.nrc.co.jp/marketing/08-03.html

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