マーケティング目標に応じたSTP分析・4P分析 アパレルの事例【解答例】ーゼミナール マーケティング入門 第1章 演習問題④

ゼミナールマーケティング入門

MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、第1章 演習問題④を取り上げています。

第1章 市場をつくり出す企業活動 演習問題④

同一の製品・サービスでも、マーケティング目標が異なれば、ターゲット、ポジショニング、コンセプト、そしてマーケティング・ミックスが異なるということを、具体的な製品・サービスを取り上げて検討しなさい。

出所:ゼミナールマーケティング入門 第2版

解答例

アパレル業界におけるメインブランドとセカンドラインについて考察します。

アパレル業界の概要

アパレルの主要な機能性は、快適性や耐久性、ファッション性であり、加えて運動性や安全性などが考えられます。

日常の衣服については、特定の用途に特化した機能は求められておらず、主要な機能が満たされている場合、ブランド力が購入を左右する大きな要因となると考えます。

アパレル各社はメインブランドとセカンドラインを使い分け、異なる顧客セグメントの取り込みを志向していると考えます。

事例 株式会社ユナイテッド・アローズ

同社はアパレルマーケットを「比較的低価格なデイリーウェアがメインのヴォリュームマーケット」と、「ファッション性が高く、ファッションの潮流に敏感なトレンドマーケット」に2分類しており、そのうち、トレンドマーケットをメインのターゲット市場と捉えています。

トレンドマーケットに対応するブランドとして、UNITED ARROWSやBEAUTY&YOUTH、green label relaxing、coenなどがあります。

メインブランドのUNITED ARROWSはトレンドマーケット向け、セカンドブランドのgreen label relaxingにはミッド・トレンドマーケット向けとしており、それぞれをマーケティング・ミックスについて分析をすると、以下の通りです。

項目UNITED ARROWSgreen label relaxing
目標メインブランドとして継続して売上を獲得するセカンドラインとして、これまでとは異なる顧客の獲得を志向する
ターゲット20代~30代の男性中心30代~
ポジショニング製品単価が高く、ハイエンドかつハイブランド手頃な価格設定
コンセプト豊かさ・上質感Be happy
製品世界中から選びぬいた品とオリジナル品を提供自分らしいスタイルにほどよいトレンド感
価格製品単価は高い安価だがそれなりの仕立ての品質
流通自社店舗ららぽーとやルミネといった商業施設のテナントとして出店
プロモーション既に認知度の高いブランドのため大衆向けのプロモーションはあまり実施しないブランド認知向上のために、テレビCM、街中の大型ビジョン、電車内広告、ウェブサイトなど、複数のメディアを組み合わせたクロスメディア戦略
ユナイテッド・アローズにおけるメインブランドとセカンドラインの整理

UNITED ARROWSはハイエンド向けで比較的幅広い世代向けではある一方、green label relaxingは比較的安価で30代とミドル層をメインターゲットとしており、販売チャネルも商業施設やショッピングセンターなどと比較的手ごろな価格帯に応じた場所での販売をしています。

マーケティング目標に応じて、ターゲット、ポジショニング、コンセプト、そしてマーケティング・ミックスが異なることを確認しました。

思考の軌跡

まず、問題文中の「同一の製品・サービス」の解釈を確認します。

「同一」を全く同じ製品・サービスと捉えた場合、例えば、「iPhone」を世代や性別などに応じたマーケティング施策を整理することも考えられますが、今回は、少し広い意味合いで、近しい機能性を持っている製品・サービスという形で解釈をして考察を進めました。

アパレルに限らず、同一の製品であっても、ハイエンド向けとローエンド向けとターゲットを分けて展開をしているケースは多く、顧客のライフライムバリューを拡大するための手法の一つと考えられます。

顧客セグメントの分類

顧客を消費数量と消費単価で整理した際に、マーケティング活動の主要なセグメントとして、以下があると考えられます。

  • ①離脱の可能性のある上客
  • ②消費数量の少ない顧客
  • ③消費単価の低い顧客
複数価格帯・製品種類の顧客消費行動への影響

それぞれの層に対して、マーケティング上の狙いがあり、以下が考えられます。

①離脱の可能性のある上客

長期のブランド利用による飽きやライフスタイルの変化などにより、顧客の消費が縮小することが考えられます。

理由は様々ですが、ブランドからの離脱を防ぐための施策の一つとして、安価な手ごろな製品(セカンドブランド)を用意しておくことも、離脱を防ぐ効果が期待されます。

例えば、アパレルの事例では、独身でお洒落に気を使っていた顧客が、結婚などを機に、自身の衣服にお金をかけなくなるなどがあるでしょう。

②消費数量の少ない顧客層

顧客の消費単価の高低にかかわらず、ブランドに興味を持ち購入してる層であり、多様な製品を追加的に提供することで、消費数量の拡大を促すことが求められます(クロスセル)。

例えば、アパレルの事例では、アウターだけを購入していた顧客にインナーや小物などを提供することが考えられます。

③消費単価の低い顧客層

一般的に、新規顧客はローエンド製品からエントリーすることが多く、そのような顧客に対して、追加購入・買い替えなどのタイミングでメインブランドに移ることを促すことが重要です(アップセル)。

例えば、アパレルの事例では、セカンドブランド製品を購入したことで、機能性やファッション性を実感し、ブランドのファンになってもらい、より単価の高い製品に移ることが考えられます。

前述の解答例では、green label relaxingは「これまでとは異なる顧客の獲得を志向する」とあり、消費単価の低い顧客層となる新規顧客の獲得を狙っていると理解できます。

ただ、一般的に新規顧客の獲得にかかるコストは非常に大きく、上記に整理している通り、顧客の離脱を防ぐといった点でもセカンドブランドの活用は有効な手段と考えられます。

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

関連情報

今回の演習問題、またその内容はこちらの書籍にまとめられております。

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本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。

また、本記事の画像はPowerPointで作成しております。PowerPoint操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。

参考文献

ゼミナールマーケティング入門 第2版

グロービスMBAマーケティング

ユナイテッド・アローズHP
https://www.united-arrows.co.jp/ir/business/market.html

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