MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。
今回は、第5章 演習問題①を取り上げています。
第3章 マーケティング資源の配分 演習問題①
企業が、「製品ポートフォリオ管理」を必要とする理由を考えなさい。
出所:『ゼミナール マーケティング入門 第2版』
以下ではプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント、製品ポートフォリオ管理をPPMと表記する
解答例
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とはなにか?
プロダクト・ポートフォリオは、事業ごとの収益とリスクのバランスを考えて、収益を最大化するための組み合わせのことで、それをマネジメントすることである。
よく知られている分析として、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱した整理が、縦軸を市場の成長率、横軸を市場のシェアとして四象限に分け、それぞれのフェーズでとるべき戦略を整理している。
問題児(市場成長率:高 市場シェア:低)
マーケティング目標:成長/撤退
企業内:シェア獲得か、撤退するかを判断し、経営資源を配分する
スター(市場成長率:高 市場シェア:高)
マーケティング目標:市場シェアの獲得
企業内:積極的に投資を行い、シェアを獲得する
金のなる木(市場成長率:低 市場シェア:高)
マーケティング目標:利益の獲得
企業活動:最低限の投資で、資金を獲得する
負け犬(市場成長率:低 市場シェア:低)
マーケティング目標:撤退
企業活動:投資を控え、当該事業の資源を他の事業へ移転する
ライフサイクルの変遷
一般的に、製品・サービス提供開始した際は、市場の成長率の高く、自社の市場シェアは低い「問題児」に該当し、そこからスタートすることになる(成長率の低い市場は成熟産業であり、そこに飛び込む判断は難しいと想定)。
問題児の事業を、スター事業にするためには積極的な投資を行う必要がある。規模の経済や経験効果が得られる範囲で、また自社の財務状況などに照らして積極的に投資を行いシェアの獲得を目指していく。
その後、市場の成長率が鈍化してきた際には、投資を控えて、いかに利益を上げるかが重要なポイントとなる。
どのようなときに役立つのか?
企業は製品・サービスを提供していくにあたり、限りある資源を効率的に配分していかなければならないが、PPMにより、各事業を公平に評価することができ、経営資源配分の優先順位を決定することができる。
オムロンの事例
ポートフォリオ管理で著名な企業と言えばオムロンがあがるだろう。
オムロンはROIC逆ツリー展開とそれに基づくポートフォリオ管理を実施している。そして、自社にとってどの事業が重要なのかをしっかりと判断している。
2019年10月にオムロンの車載部品事業を日本電産に事業譲渡をした。車載部品事業は同社の重要な事業で売上規模は1000億円で、利益率やROICも高い数値を維持していた。
しかし、そのような状況であっても、今後の事業の将来性などを判断し、売却をする決断をした。
事業をポートフォリオとして管理し、客観的な数値や将来の予測をしているからこそ、利益の出ている事業を売却するといった判断ができたのであろう。
思考の軌跡
まず、PPMとは何か、それがどのような場面で効果的なのかを整理した。
基本的に、製品ライフサイクルに応じた投資判断を行うが、市場成長が鈍化する衰退業界での機会については参考となる別記事があるので、そちらもご確認いただきたい。
また、具体例として実際にPPMのような管理をしている企業を調査した。大企業の中でも、三菱重工業、三菱電機、三菱ケミカル、川崎重工業、住友重工業など、数十社がポートフォリオマネジメントをしていることが確認できた。
なお、PPMに関連してROICによるポートフォリオマネジメントについては別途まとめる予定である。
他の問題は以下からご覧ください。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
参考文献
オムロンはなぜ、営業利益60億円の車載部品事業を手放したのかhttps://diamond.jp/articles/-/266108
コメント