マーケティングのSTP分析・4P分析 いろはすの事例【解答例】 ーゼミナール マーケティング入門 第1章 演習問題③

ゼミナールマーケティング入門

MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナールマーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。

今回は、第1章 演習問題③を取り上げています。

第1章 市場をつくり出す企業活動 演習問題③

具体的な製品・サービスを取り上げ、そのターゲット、ポジショニング、コンセプトおよびマーケティング・ミックスの整合性を検討することで、なぜ、その製品・サービスが成功あるいは失敗しているのかを分析しなさい。

出所:ゼミナールマーケティング入門 第2版

解答例

具体的な製品・サービス:「い・ろ・は・す」 日本コカ・コーラ

「い・ろ・は・す」は2007年に日本コカ・コーラから発売されたするナチュラルミネラルウォーターです。

市場環境

外部環境の「市場環境」の観点では、「い・ろ・は・す」発売当時、日本のミネラルウォーター市場は、欧米各国に比べて小さかったため、成長のポテンシャルはあると考えられていました。

しかし、日本では水道水を飲むこともできるなどもあり、製品としての差別化や需要を喚起することが難しい状況でした。

世界と日本のミネラルウォーターの消費量

顧客の観点

さらに、「顧客」に焦点を当てると、2008年の博報堂生活総合研究所の「世界8都市・環境生活調査」調査で、東京は「地球温暖化への危機感」(88.4%)、「経済発展より環境保護を優先」(90.2%)は世界8都市中トップである一方、「地球環境に配慮した行動が日常的な習慣になっている」(58.4%)は8都市中最下位でした。

つまり、環境に対しての問題意識はあるものの具体的にどのような行動をとればよいのか明確でない人が多い状況といえます。

ターゲット・ポジショニング・コンセプトの観点

上記の前提を踏まえた上で、マーケティングのターゲット、ポジショニング、コンセプトを整理すると以下の通りです。ポイントは、「環境」をキーワードに話題性を創出し、環境問題に関心のある若年層をターゲットとして売上を伸ばしたと考えられます。

項目内容
ターゲット環境問題に関心があり、これまでのミネラルウォーターの主要な購入層である20~30代の若年層
ポジショニング飲みやすい軟水で、価格も相対的に安い
コンセプト他社品と比べて環境にやさしいため、購入することで気軽に環境問題に取り組むことができる。
製品名には、健康と環境の持続性を志向するキーワード「LOHAS:Lifestyles Of Health And Sustainability」を使用
マーケティングのターゲット、ポジショニング、コンセプトのまとめ
ミネラルウォーターのポジショニング整理

マーケティング・ミックスの観点

マーケティング・ミックス(4P)の観点では、日本人が好む軟水でおいしいミネラルウォーターを、割安感のある価格で、自動販売機を含むコカ・コーラの流通網を活用することで、どこでも手軽に購入することができる体制を構築した。また、テレビCMではリサイクル比率の高さをアピールするとともに、リサイクル促進に向け、ボトルを「しぼる」といった目を引く広告を展開するなどのマーケティング・ミックスを実施した。

項目内容
製品日本の5つの名水地から、クセの少ない超軟水を採水。
フレーバーウォーター、炭酸入りなど複数の味を提供。
価格ボトルの軽量化により容量を増やした(555mlや1020ml)ため割安感がある
流通国内最軽量の12g(従来品より40%軽い)のボトルを採用。
コンビニや自動販売機(約96万台)にて、どこでも購入できる
プロモーションボトルのリサイクル促進を含んだテレビCMなどを積極的に展開。
飲み終わったあとに簡単に「しぼる」ことができ、回収時の省エネに貢献できる。
近年ではラベルレスなど、より環境を配慮した仕様の製品も登場している
マーケティング・ミックスのまとめ

市場の未成熟さや顧客が潜在的に抱えている問題意識に焦点を当て、「環境」をキーワードとして、ターゲット、ポジショニング、コンセプトおよびマーケティング・ミックスの整合を検討したことで成功した事例と考えます。

思考の軌跡

外的一貫性の観点から、3C分析の「市場環境」や「顧客」という視点でそれぞれの特徴についても簡単に触れ、その後にシンプルにターゲット、ポジショニング、コンセプトとマーケティング・ミックスの4つの要素を調査・整理しました。

整理にあたっては、外部環境→内部環境という順を採用しています。検討順についての考察は下記も参考にしてください。

差別化の難しい製品、あるいは優位性の主張が難しい製品に、「環境」というキーワードをテコに市場を開拓していく手法は多くみられます。特に、近年ではサスティナブルや脱炭素などの領域が、欧米の得意なエッジの利かせ方でもあり、コカ・コーラらしい手法と感じました。

消費者が特定の製品・サービスを選ぶ理由の一つに、製品・サービスのストーリー性であり、消費に対して意味を感じる、とのことです。このように消費者に意味付けを行うことがマーケテイングとしての機能であり、マーケティング・ミックス(4P)の検討に加えて、ターゲット、ポジショニング、コンセプトの設計が大事と感じました。

ポジショニングについては、今回は、縦軸:価格、横軸:水の硬度として、いくつかの主要な商品について整理をしましたが、軸の切り口について、何を採用すると意味のある分類ができるか、競合をどの程度拾っていくか、ということは重要な論点であると思いました。

実際に調べている過程で、中硬水に該当する製品は存在するものの、認知度が非常に低いマイナーなミネラルウォーターが多いと感じました(それもあり、今回はプロットをしていません)。中硬水で、なにかしらの差別化を図るポジショニングにも可能性があるかもしれないと感じました。

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

関連情報

今回の演習問題、またその内容はこちらの書籍にまとめられております。

Amazon.co.jp

本サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。

また、本記事の画像はPowerPointで作成しております。PowerPoint操作の解説記事・講座もありますので、興味のある人はご覧ください。

参考文献

ゼミナールマーケティング入門 第2版

グロービスMBAマーケティング

「い・ろ・は・す」公式ウェブサイト
http://www.i-lohas.jp/

「いろはす」競争厳しいミネラルウォーター市場、「環境」で差別化(2012年2月1日掲載)
https://j-net21.smrj.go.jp/special/populardrinks/2012020101.html

日本ミネラルウォーター協会
https://minekyo.net/publics/index/5/

博報堂生活総合研究所『世界8都市・環境生活調査』
http://seikatsusoken.jp/wp/wp-content/uploads/2008/05/RN_20080514.pdf

水広場
https://www.mizuhiroba.jp/

いろはす
30.8mg/L 100mlあたり6.9円 (1,100 2000ml×8本

あずみの湧水
25mg/L 100mlあたり11.2円 (1,348 2000ml×6本

澄みきった日本の水
21mg/L 100mlあたり10.1円

森の水だより

クリスタルガイザー

ボルビック
硬度:62mg/l  (¥2,500 1500ml×12本)

サンベネデット / SAN BENEDETTO
硬度:235mg/l  (¥3,900 1500ml×12本)

ソラン デ カブラス / SOLAN DE CABRAS
硬度:260mg/l  (500ml×20本)

エビアン / evian
硬度:304mg/l  (¥2,380 1500ml×12本)

ゲロルシュタイナー
硬度:1310mg/l  (¥2,580 1000ml×12本)

価格については、22年9月7日時点の数値を採用

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