社会人になってから勉強しなくなったなと感じているものの、どんな勉強をしたらいいか悩んでいる方へ、
そもそもなぜ勉強が必要か、社会人が身に着けておくとよい知識やスキルの整理をし、どういった手法があるかをご紹介していきます。
自分は30代の初めごろに、仕事をしながらMBA取得をし、キャリアアップをしました。そういった経験が参考になればと思っております。
なぜ大人になっても勉強が必要なのか?
勉強しない日本の社会人
総務省による平成28年社会生活基本調査―生活時間に関する結果―(平成29年9月15日公表)を紐解いていくことにしましょう。
統計回答者(10~19歳の未就層を含む)の週全体の生活時間のうち、「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」の総平均時間はわずかに13分でした。
回答者の「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」の行動率は全体の9.4%で、行動者の平均時間は135分だそうです。
回答者の属性を有業者に限定をすると、「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」の総平均時間はわずかに6分となります(10~19歳の未就層の学習が平均を押し上げていると推測されます)。
さらに、「仕事からの個人の年間収入・収益」で分類すると次のようになります。
仕事からの個人の年間収入・収益 | 学習・自己啓発・訓練(学業以外) |
250~299万円 | 5 |
300~399万円 | 6 |
400~499万円 | 7 |
500~599万円 | 5 |
600~699万円 | 5 |
700~799万円 | 6 |
800~899万円 | 6 |
900~999万円 | 7 |
1,000~1,499万円 | 8 |
1,500万円以上 | 19 |
年収額によって大きな変化はなさそうですが、1,500万円以上の層は少しだけ時間が多いようです(それでも週に19分)。
この統計に対する考察を補足をしておくと、日本企業はOJT(On the Job Training)を主軸とするトレーニング制度が多いので、仕事時間内に業務に関連する勉強時間を含んでいる可能性があるのでは?と思いました。
しかし、いずれにしても業務時間外での勉強時間は極端に少ないことがわかります。
勉強しないと、将来どうなるの?
ここで勉強をしない人材を考えてみます。
勉強をしていないと知識がアップデートされないため、社会の変化から取り残されることになるでしょう。
その影響は、組織の管理者レベルで言えば、知識不足から判断を誤り、自社の競争能力を他社に比べて劣位させてしまう可能性があります。
例えば、競争優位を構築できるような新しい技術が開発されているのに、新しいものの導入に消極的で従来のやり方に固執してしまう、あるいはそもそも新技術の存在自体を知らないなど、があるかもしれません。
また、若手などの通常の社員レベルでは、ビジネスパーソンとしての知識やスキルが成長していかないため、将来的に会社や社会から必要とされなくなる可能性もあるのではないでしょうか。
「勉強しなくても日本企業は終身雇用だから、クビになることはありえないし、大丈夫でしょ」と考えている人もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
確かに、よほど重大なことをしなければクビにはならないかもしれませんが、そもそも企業自体も競争環境が大きく変わる不確実性の高い世の中では、競争に負けて倒産するかもしれません。
倒産までいかずとも業績が悪くなり、早期退職の募集など人員削減をすることになるかもしれません。
あるいは、給料が下がり生活が苦しくなるかもしれませんが、転職をしようとしたころには知識やスキルがなくてできない、なんてことになるかもしれません。
また、会社に残り続けることができても、将来的に組織を管理する立場になった際に、先述のように知識がないことから判断を誤り、企業を弱体化させてしてしまうかもしれません。
勉強は社会に求められる人材であり続けるために必要
企業の競争環境も、個人が働く環境も変化が速い時代では、世の中の変化を捉え、求められている知識やスキルに常にアンテナを張り、知識をアップデートしていくことが必要です。
その行動こそが勉強なのではないかと思います。
勉強して知識をつけることで、社会から求められる人材であり続けることができると思います。
社会から求められる人材は、その能力を評価されているので、より高い年収であったり、より裁量を持った仕事にチャレンジする機会も増えるでしょう。
なにを勉強すべきか?
先の統計では90%の人が業務外の勉強をしていないので、差をつけるのは比較的簡単かもしれません。同期などに差をつけるために勉強をしようと決意したあなたは、まず何をすべきでしょうか?
ビジネスパーソンとして必要な能力を確認していこうと思います。
参考・人生100年時代の社会人基礎力 by 経済産業省
経済産業省では、「人生100年時代の社会人基礎力」として、3つの能力(前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力)と12の能力要素を定義しています。
こういった整理も自分がどの能力を伸ばすかを考える際に参考になると思います。
基礎スキルと経営学知識を体系的に整理
上記も踏まえて、特に「考え抜く力」に該当するような項目と思いますが、ビジネスパーソンとして求められる基礎的スキルと経営学的知識を整理してみました。
汎用的な基礎的スキル:ベース部分
まず一階部分としての汎用的な基礎的スキルは、ロジカルシンキングや資料作成能力などをベースに添えつつ、多くの人が取り組むであろう語学や、昨今注目を集めているデータ分析的なスキルを特だしするなど、重要と考えた項目を整理しました。
- ロジカルシンキング
- データ分析力
- 資料作成力
- 語学力
- ビジネスマナー
特に、データ分析は、分析系の部署の専門知識と考えることもできるが、統計の基礎的な知識はすべてのビジネスパーソンが習得しておくべきと考えて、基礎スキルに配置をしました。
ビジネスマナーはご愛敬です(笑)。最近仕事をした相手のマナーがあまりよくなくて不快な思いもしたため記載をした次第です。
本サイトでも記事を配信している(行く予定)ので以下の記事も参考にしてください。
>>>汎用的スキル・ロジカルシンキングに関連する文書の書き方
>>>汎用的スキル・資料作成力としてのPowerPoint学習講座
専門的な経営学知識:二階部分
基礎の上の二階部分としてビジネスパーソンに有用な経営学の項目と会社での専門となる領域・部署を整理しました。
- 経営戦略
- マーケティング
- 会計・ファイナンス
- 組織論・人的資源管理
- オペレーション
例えば、経営学としての経営戦略は、会社の企画部(経営企画、事業企画などが該当する想定)に所属する人が勉強すると効果が高い科目であり、その中には全社戦略や事業戦略、新規事業あるいはM&Aなどが含まれています。
本サイトでも記事を配信している(行く予定)ので、以下の記事も参考にしてください。
どの領域で、どの能力を伸ばしたいか?
上記の整理から、自分がどのスキルや知識に課題を感じているかに応じて、勉強する領域を選ぶとよいと思います。
入社5年目くらいまでに、ロジカルシンキングや資料作成などの基礎的なスキルを中心に伸ばしたり、もう少し上の年次となり、自分の専門領域を考え始めている人はマーケティングやファイナンスなど、業務に関連する科目を勉強するとよいと思います。
どのように勉強すべきか?
どのような手法で勉強をしていくかを簡単に整理していきます。
現在は勉強において様々なツールもあるので、自分のやりやすい形で選ぶとよいと思います。
勉強の仕方の整理
個人で完結できるものと、学習機関を利用するものに大別して整理しました。それぞれのメリットや考えられるリスクを簡単に記載していきます。
書籍
最も一般的と思いますが、本屋さんでビジネス本を購入し、読みます。
メリットは専門書なども比較的安価に入手できる点ですが、一方でリスクとしては解釈が難しい内容などでは個人学習が難しい可能性もあります。
なお、本サイトではMBAでテキストとして利用されているなどのおすすめ書籍を紹介しています。
>>>おすすめの経営学の本ー戦略編(全社戦略・事業戦略、新規事業開発、M&A)
>>>おすすめの経営学の本ー人的資源管理・リーダーシップ・コーチング編
Youtube
最近は学習系の動画も増えておりますが、視聴することで勉強になるでしょう。
メリットは無料であることですが、一方でリスクとしてはコンテンツの質に不安がある点、配信者の都合に基づくコンテンツになるといった可能性があります。
オンライン講座
世界最大級のオンライン学習プラットフォームであるUdemyなどで販売されるオンライン講座を受講することもできます。
>>>Udemyホームページはこちらメリットは講座の受講を手軽に始められることですが、一方でリスクとしては講師やコンテンツの質に精査が必要な点があります。
筆者も基礎スキルのPowerPointやExcelについて講座を提供していますので、ご確認ください。
セミナー・勉強会
外部機関が主催するセミナーや勉強会に参加する方法もあるでしょう。
メリットは、専門的な内容にアクセスできる点ですが、一方でリスクとしてはセミナーの開催頻度に依存し、興味あるイベントを探すのに労力が必要な可能性があります。
資格取得スクール
資格取得を支援するスクールの講座を受講する方法もあります。有名なところでは、資格の大原やTACなどがあります。
メリットは、資格取得のために体系的な講座を受けられる点ですが、一方でリスクとしては講座の受講に相応の費用が掛かり、強固な目的や意思が必要となるでしょう。
大学院
経営などの大学院に入学して研究をする方法もあります。
最近ではリカレント教育の流れから、社会人の間口が広がっており、社会人向けの入試方法やカリキュラムなどが設計されている大学院もあります。
メリットは、専門的な知識を習得できる点ですが、一方でリスクとしては入学のハードルが高く(入試対策、費用や期間)、入学後も専属で時間を確保する必要がある点です。
大学院入試に向けた研究計画書の作成についてまとめた記事もご参照ください。
学習ツール利用の留意点
様々なツールがあるので、基本的には自分のやりやすい形で選ぶとよいと思います。
ただし、勉強の目的の一つである視野を広げるという観点では普段、自分とは無関係の内容にあえてチャレンジすることも重要です。
異業種交流などの重要性が言われるのは、異業種のスタンダードを横展開して、自分の業界でも適用できないかなどと考えることに価値があるからです。
そういった点では、大学院などでは、他のコミュニティーとの交流を深めることもできるのでより広い視点を得ることに役立つと思います。一方で、個人完結型は自分の考えに沿って活動していくことから、視野が広がりにくいという点を留意しておく必要があると思います。
今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
参考文献
総務省「平成28年社会生活基本調査―生活時間に関する結果―」
https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf
経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/jinzairyoku/jinzaizou_wg/pdf/007_06_00.pdf
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