製品ライフサイクルを踏まえたプッシュ戦略とプル戦略の追加考察

プッシュ戦略かプル戦略かと二項対立の関係ではなく、両者を併用したバランスのあるマーケティング戦略が重要であるという意味合いについて考察をしてみたい。

製品プロダクトライフサイクル(PLC)の概要

ここでは、製品プロダクトライフサイクル(以下、PLCと記載する)を考える。

PLCは製品が市場に導入されたから、姿を消すまでの変遷を表すモデルであり、一般的に縦軸を売上、横軸を時間の推移として、売上の変遷を導入期、成長期、成熟期、衰退期に区分している。

簡単に各ステージの特徴を売上の多寡、マーケティング目標の観点から説明する。

導入期

  • 売上規模
    製品を市場に投入する段階であり、需要がほぼ存在しない(顧客の認知度が低い)ため売上は限定的。
  • マーケティング目標
    製品認知を高め、市場拡大・確立させることが最優先課題になる。そのために販売促進のための費用が必要になる。

成長期

  • 売上規模
    製品認知が高まり、売上が急激に拡大する段階。同時に、競合との競争も激しくなる。
  • マーケティング目標
    市場への浸透を目指して自社製品のブランド力を高めることなどが重要になる。

成熟期

  • 売上規模
    市場成長に陰りが見え、売上が頭打ちになる段階である。
  • マーケティング目標
    リーダー企業はコスト優位性などを活用してシェアを維持することが、非リーダー企業は、ニッチ戦略などによりシェアの獲得が重要になる。

衰退期

  • 売上規模
    市場縮小により売上減少、値引きなどによる売上減少が生じる段階である。
  • マーケティング目標
    アフターサポートの強化などで既存顧客を維持しつつ、撤退時期を判断することが重要となる。

各ステージでのプッシュ/プル戦略の有効性

まず、プッシュ戦略とプル戦略の簡単な特徴を振り返る。

プッシュ戦略は、メーカーが流通や小売に対して働きかける施策で、他社製品・サービスとの差別化ができていない、製品・サービスの認知度も低いなどの新製品に向いている戦略である。主に販売方法の指導、リベートなど。

一方で、プル戦略は、メーカーが直接消費者に働きかける施策で、ブランドの認知度が高く、積極的な個別セールスの必要性が低い場合にとられる戦略である。主にマス広告など。

各コミュニケーションの仕方はPLCのステージによって変わるため、ステージごとのマーケティング目標に対してプッシュ戦略をプル戦略を評価した。評価の観点は、非常に簡易的に、戦略を実行するためにかかる費用とその効果の観点から検討しており、明確なクライテリアを設定したものではないのであくまでイメージとしてとらえていただきたい。

導入期に有効な戦略

導入期は、製品の認知度拡大、市場確立を目指す時期である。プッシュ戦略とプル戦略のバランスが求められる時期であると考えられる。

  • プッシュ戦略
    店舗を訪れる消費者に対して、販売員が個別に製品説明をすることは効果が非常に高い。一方で、小売店からすると、条件がよくとも売れるかわからない製品を取り上げる意思決定はしづらい状況でもある。
  • プル戦略
    広告などは認知を高めるために効果があるが、新商品などで相応の説明な必要なケースでは十分とは言えないのではないか。例えば、ワープロ、ラジカセなどをイメージしてみてほしい。いままでに全く存在しない特徴を持った製品が世の中に初めて登場したとき、広告を見ただけで商品をすぐに購入しようという気持ちになるでろうか。

成長期に有効な戦略

成長期では、多額のマーケティング費用を投入し、市場でのポジションを確立する。

  • プッシュ戦略
    さらに効果が高まっている。特にこの時期は製品そのものの機能に加えて、他社との差別化のポイントを消費者に理解してもらい、ブランドを確立することが重要になるため、個別営業などの効果が高い。
  • プル戦略
    商品の認知度合いも高まり始めているため、広告の効果が高まっていると考える。特にアーリーアダプターを活用したマーケティングが有効であると考える。

成熟期に有効な戦略

成熟期では、いかに費用を抑えて利益を確保することに主眼がおかれることを前提となる。

  • プッシュ戦略
    製品の認知度は十分高い状況であり、費用の掛かるプッシュ戦略は以前ほど有効性が高い状況ではないと考える。
  • プル戦略
    マス広告などで新しい需要を喚起することの可能性もあるが、これまでのコミュニケーションで反応しない層しか残されていないなどから、売上が頭打ちになっていると考えられ、効果は成長期ほど高くはない。

衰退期に有効な戦略

衰退期では、いかにして利益を刈り取り、市場から徹底するかを考えている。

  • プッシュ戦略
    このステージでプッシュ戦略をとることは、経済合理性があまりないと考えられる。
  • プル戦略
    リーダー企業であれば、自社が衰退する業界でも事業を続けることを示すためのマス広告などをとることが考えられるが、衰退業界では経済合理性があまりないと考えられる。

→衰退業界における機会についてはこちらの記事も参照ください

プッシュ戦略とプル戦略のバランス

ここまで見てきたように、導入期や成長期ではプッシュ戦略とプル戦略の双方が効果的であるようにトレードオフの関係ではなく、相互にサポートしあう関係であると示せたと思う。

いずれかに偏った戦略はうまくいかない見込みが高く、一例を下記に示す。

プッシュ戦略中心(プル戦略なし)の場合

大々的にプッシュ戦略を採用し、小売店での販売強化を志向したとしても、広告戦略(プル戦略)がなければ、そもそも消費者が商品を知る機会が店舗のみに限定され、市場拡大をすることに時間がかかることになるであろう。

プル戦略中心(プッシュ戦略なし)の場合

大々的な広告戦略(プル戦略)を採用したとしても、小売店のサポートがなければ製品を売ることができないであろう。なぜなら、小売店はより良い条件(資金の援助や製品説明の協力、リベートの有無など)のメーカーの製品を優先して顧客に売ることが容易に想像できるためである。

 

元の記事はこちら↓↓

【解答例】プッシュ戦略とプル戦略の違いのまとめ ーゼミナール マーケティング入門 第1章 演習問題②
MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナール マーケティング入門 第2版』の演習問題を考えてみたいと思います。今回は、第1章 演習問題②を取り上げています。

 

他の問題は以下からご覧ください。

【まとめ】ゼミナールマーケティング入門 演習問題の解答例
MBAのマーケティングの授業でよく参考書として取り上げられている『ゼミナール マーケティング入門 第2版』の演習問題を考えています。まとめページになります。

 

今回は、ここまで~。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

 

参考文献

プロダクト・ライフ・サイクル論に関する基礎的考察

 

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