【社会人大学院入試】経営学(MBA) 修士論文のための研究計画書の書き方

MBA体験記

本記事は、経営大学院の入試を検討している人向けに、院試で求められる研究計画書について、特に社会人としての実務経験を持つ人がどのように研究テーマを設定するとよいかをまとめました。

研究計画書とはなにか?

研究計画書は、大学院へ出願時に必要となる書類で、自身が大学院入学後に取り組みたい研究内容についてまとめるものです。大学院入試では重要な要素の一つであると言われております。

具体的には、研究テーマや研究テーマに取り組もうと考えた背景や問題意識、テーマに対してどのような仮説を持っているか、実際にどのような研究手法を用いて仮説を明らかにするのか、などを提示することだと考えています。

有名どころの経営系の大学院のホームページを見ると、研究計画書の提出が必要なところが多いようです。

東京大学大学院経済学研究科の場合

募集要項によると、経営学コースでも研究計画書の提出が求められています。

経営学コースの研究計画書は、A4 判の用紙を使用し、今後の研究テーマ、研究目的及び研究方法について、日本語の場合は 6 ページ程度(10,000 字程度)、英語の場合はダブルスペースで 9 ページ程度でまとめること。なお、本研究科に入学してから行う予定の研究計画について、これまでの準備状況が分かるように書くこと。

出所:東京大学大学院経済学研究科修士課程学生募集要項補足説明書

京都大学経営管理大学院の場合

募集要項によると、特別選抜(社会人選抜)では、学習計画書の提出が求められています。

学習計画書の設問4は、研究計画と同義と思います。

(設問4)
現代のマネジメントの課題は何か、自分がもっとも重要な課題であると考え、その解決のために関わっていきたいと考えている課題について説明しなさい。

出所:2023年度京都大学大学院経営管理教育部(専門職学位課程)経営管理専攻 特別選抜・観光経営科学コース特別選抜 募集要項

一橋ビジネススクールの場合

募集要項によると、修士課程 経営学修士コース(経営管理プログラム) では、将来計画書の提出が求められています。

将来計画書の[⼊学後の計画]は、研究計画と同義と思います。

・この様式を表紙に⽤い、下記項⽬について、⽇本語で、合計 2,000 字程度で記述したものを、2 部作成してください。
・必ず、ステープラー等で左横の上下 2 箇所を綴じてください。
[志望動機]
[⼊学後の計画]
[修了後の計画]

出所:2023 年度⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科 修⼠課程学⽣募集要項

神戸大学大学院経営学研究科現代経営学専攻の場合

募集要項によると、神戸大MBAでは、指定のフォーマットでの研究計画書の提出が求められています。

内容は、研究テーマの概要、研究の背景となる経験・資源、研究の進め方などです。

そもそも「研究」とは何か?

研究計画書を書く前に、まず大学の研究と言われる活動がどのようなものなのか理解しておく必要があると思います。

研究がどのようなものかを理解しつつ、研究計画書を作成しなければ、大学院入試で評価されないので注意が必要です。

学術研究とは by文部科学省

学術研究は基礎研究から実用志向の研究まで幅広く含有しており、新たな知の創造と幅広い知の体系化により、科学技術の推進や社会・国家の発展の源泉となるもの

文部科学省 資料3 学術研究に関する整理

学術研究について、文部科学省の示している定義を確認すると、上記のような記載があり、新たな知の創造、知の体系化が重要なポイントとなっていることがわかります。

なお、学術研究の意義や必要性については、文部科学省が基本的な考えを発表しているのでそちらも目を通してみると理解が深まるかもしれません(文末に参考文献としてリンクを記載しています)。

経営学の研究は、企業経営の真理を追究すること

経営学についても同様で、企業経営に関連する内容を対象に科学的な方法で分析していきます。

科学的というのは、世の中の真理を追求する・事象の因果関係を明らかにするといったことと同義であり、明らかにした真理を論文としてまとめることが求められています。

そのためのアプローチは大きく2つあります。

一つは、仮説に基づいて、統計的にデータを収集・分析する手法です。近年、特に欧米のビジネススクールを中心に、統計的な手法が主流になってきています。

もう一つは、特定の企業にフォーカスを当てて、詳細に観察をしていく手法です。事例研究、事例調査、ケーススタディなどと言われている手法で、特に日本では重要とされているアプローチです。

論文として重要な三要素

研究結果を論文としてまとめる際に重要な三要素は、論文の新規性、有効性、信頼性と言われており、以下で簡単に確認してきます。

新規性

新規性とは、自分のやろうとしている研究内容がこれまでの研究内容(先行研究)と比べて何かしらの点において目新しさがあるということです。

新規性を付与するには多様な観点があるので、完全に新しいことをしなければ論文を書けないわけではないので工夫次第と思います。新規性については、後述します。

有効性

有効性とは、研究内容が学術や産業の発展に何らかの意味で役立つか、貢献するかということです。

研究が、既存のものと比べて、部分的であれ、優れていることを示せるとよいでしょう。

信頼性

信頼性は、研究内容の論理構成などを含めて、再現性のある内容であり、信頼できるものであるということです。

研究デザインに関わる部分でもありますが、適切な検証デザイン(例えば、統計的な検証であれば、サンプル対象、サンプル数、データ処理の仕方など)をすることなどが重要です。

なにを研究テーマとすべきか?

先行研究を調べる

論文には新規性が求められていることから、研究テーマを考えるには、まず先行研究を把握して、どのようなことが、どこまで明らかになっているのかを理解する必要があります。

簡単に先行研究を調べる方法を書いておきます。

文献データーベースを活用する

インターネットでも比較的多くの文献にアクセスすることができます。代表的なもので言えば、「CiNii」「Google scholar」「J-STAGE」などがあります。

他にもデーターベースはありますが、研究計画書を策定する上ではまずはこの3つくらいを調べて見るとよいと思います。

機会があればデーターベースの違いについてもまとめたいと思います。

データーベースで検索する際は、まずはレビュー論文などを検索するとよいかもしれません。

レビュー論文とは、特定のテーマに関する研究論文の概要や評価をまとめて記述している論文で、自身が関心のある領域についての論文がまとめられている可能性もあります。

指導教員に相談する

学部の生徒であれば指導教員に相談するというのは最も一般的な方法かと思いますが、社会人の方も、かつての指導教員や身の回りでアカデミア関係の仕事をしている人に相談するのもよいと思います。

入学後は、自分の研究テーマをブラッシュアップしていくために指導教員とのコミュニケーションは欠かせないでしょう。

ただし、最近聞いた情報ですが、学校によっては出願前に、教員との接点を持つことを禁止しているところもあるそうです。そのあたりは、事前に調べてみてください。

参考・ベースとしての経営学を学ぶ

なお、経営学でどのようなことを学ぶのかイメージがないと、研究テーマの設定も難しいと思います。

自分がMBAで利用していた書籍を領域ごとにまとめていますので、どんな内容があるのかなど、自分が興味のある領域を目を通してみてください。

>>>おすすめの経営学テキストー戦略編(全社戦略・事業戦略、新規事業開発、M&A)

>>>おすすめの経営学テキストー会計・ファイナンス編

>>>おすすめの経営学テキストーマーケティング・統計編

>>>おすすめの経営学テキストー人的資源管理・リーダーシップ・コーチング編

>>>おすすめの経営学テキストーオペレーション編

なお、世の中にあるビジネス本や自己啓発本などは、参考文献として適さないこともありますので、ご注意ください。

研究テーマを考えるヒントは?

ここからは、社会人としての実務経験を持つ人が、どのように研究テーマを考えていくのがよいのかをまとめていきたいと思います。

社会人採用をしている大学院では、社会人としての実務経験を、学問の世界に還元することも期待されているので、そういった視点を大事にするとよいと思います。

学術的価値×業務経験の親和性の整理

研究テーマを設定するヒントとして、学術的価値(先行研究の有無)と業務経験との関連性の大小という観点で整理をし、以下の通り名前を付けました。

  • 箸にも棒にも掛からない研究テーマ
  • 取り組む価値が小さい研究テーマ
  • チャレンジングな研究テーマ
  • 強みを活かせる研究テーマ

ずばり、研究テーマの設定は「学術的価値が大きく」かつ「自身の業務経験との親和性が高い」領域の強みを活かせる内容とすることがよいと思います。

【社会人大学院入試】経営学(MBA) 修士論文のための研究計画書の書き方研究テーマの考え方
箸にも棒にも掛からない研究テーマ

先行研究があり、自身の業務経験との関連性が低い研究テーマです。

先行研究を十分に調べていない、新しいことにチャレンジしたいといった人が、このような研究計画を書いてしまうケースがあります。

特に学術的な観点から、研究計画書での評価は厳しめになることが想定されるので、おすすめはできません。

例えば、あなたが、製薬業界の新規事業開発チームで部下10人をマネジメントしているとしましょう。

昨今のトレンドとして自動車産業のCASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング・サービス、Electric:電動化の頭文字)が新聞などのメディアで大きく取り上げられているのを見て、自動車産業に関心を持ちました。

ネットなどで調べていると、自動車産業と言えばトヨタ生産方式に代表されるようにサプライチェーンの巧拙が企業の競争優位に大きな影響を与えていると理解をしました。

さて、あなたが、自動車産業、サプライチェーンで研究テーマを設定することは合理的でしょうか?

個人的な見解では、「×」です。

自動車産業は日本の伝統的な産業であり、特にサプライチェーン領域については非常に多くの研究者がこれまで研究をしてきております。

異業種のあなたが、先行研究のないようなサプライチェーンのマニアックな領域を研究対象にするのはなかなか難しいのではないかと思います。

取り組む価値が小さい研究テーマ

先行研究があり、自身の業務経験との関連性が高い研究テーマです。

先行研究をある程度把握していて、例えばその内容に明らかな間違いがあり、それを指摘したいなどでしょうか?

新しい視点での検討や既存の研究内容を更新していくのであれば学術的価値はあるかもしれませんが、先行研究が十分にある場合、論文としてのインパクトは期待できないでしょう。

本気でアカデミックな世界で生きていくつもりのない人で、論文を書く必要性が迫られている人は選択する余地はあるかもしれません。。

例えば、あなたが、製薬業界の新規事業開発チームで部下10人をマネジメントしているとしましょう。

自身が新規事業開発に取り組んでいることもあり、製薬会社の医薬品開発のイノベーションに興味を持ちました。チームをマネジメントしていることもあり組織に焦点を当てて研究をしようと考えています。

さて、あなたが、製薬業界、医薬品開発イノベーション、組織活動で研究テーマを設定することは合理的でしょうか?

個人的な見解では、「×」です。

Google scholarで「製薬」「イノベーション」と調べると、パッと見ただけでも数多くの論文があります。

例えば、『日本の製薬企業におけるイノベーション』(2007:原拓志)では、イノベーションの類型化や社会的プロセス(組織の活動)についてまとめているようです。

先行研究にない組織プロセスを対象にすれば価値はありますが、類似の内容となってしまうとインパクトは小さくなってしまうでしょう。

チャレンジングな研究テーマ

先行研究がない、あるいは先行研究の限界から着想を得ているものの、自身の業務経験との関連性が低い研究テーマです。

新規性があるため学術的な価値は評価できますが、自身の経験との関連性が低いため研究に取り組むには難易度が高いでしょう。

そのテーマに取り組みたい強い動機があれば否定はしませんが、熱意だけでは論文は書けないので(例えば、実験、インタビュー、データ収集に協力してくれる組織や個人などの関係性が重要)、どのように研究していくかのアプローチ設計も含めて練り上げる必要があると思います。

例えば、あなたが、自動車業界の調達チームで部下10人をマネジメントしているとしましょう。

昔から新規事業開発に関心があり、特に製薬業界ではオープンイノベーションと呼ばれる手法を用いて新薬の開発などに取り組んでいると耳にしました。

少し調べてみると、製薬業界では医薬品の開発難易度が高まっていることから、オープンイノベーションを推進しているらしく、また、特にその活動が活発になったのは比較的近年になってからのようで、先行研究もまだまだ少ない印象を受けました。

さて、あなたが、製薬業界、医薬品開発、オープンイノベーションで研究テーマを設定することは合理的でしょうか?

個人的な見解では、「△」です。

新規事業に対する思いがあったとしても、他業界のオープンイノベーションを研究対象にするにはなかかな難易度が高いのではないでしょうか。

たとえ魅力的な研究をデザインしたとしてもそれを実現できるかに疑問が残るためです。応募した大学院の教授の専門とフィットするのであれば可能性はあるかもしれません。

新規事業系のテーマにしたいのであれば、少なくとも自分の業界にすることがよいでしょう。

また、調達チームでの経験は活用しずらいので、自社の新規事業部署の協力者がいることなどを明確にして、一定の実現性の高さを示す必要があるのではないでしょうか。

強みを活かせる研究テーマ

先行研究がない、あるいは先行研究の限界から着想を得ており、自身の業務経験との関連性が高い研究テーマです。

自分の業務経験に基づくテーマのためベースとしての知見があり、検証のための取り組みも比較的容易であり、おすすめすべき領域です。

研究中も軌道修正が比較的容易にできるでしょう(研究はうまくいかないことも多いので、随時見直していくことが求められます)。

例えば、あなたが、製薬業界の新規事業開発チームで部下10人をマネジメントしているとしましょう。

競合を含め、医薬品企業は近年、デジタルセラピューティクス(DTx)と呼ばれるデジタルを活用したサービスを開発しています。多くの企業がデジタルを活用するトレンドの中にあって、サービスを比較的早い時期に上市できた自社は業界の中でもモデルケースとなっているようです。

他社よりうまく振舞えたのは様々な要因があるでしょうが、一つには組織の強みが活きた結果かもしれません。

さて、あなたが自身の業務経験を活かし、製薬業界の非医薬品関係の新規事業開発を研究対象とするのは合理的でしょうか?

個人的な見解では、「〇」です。

この場合、製薬業界、新規事業創出、例えば、リーダーシップという大枠で研究テーマを設定し、さらに詳細に研究課題を設定していくことが効果的かもしれません。

CASE 研究テーマの設定 まとめ

ここまでの整理から、研究テーマを「製薬業界における新規事業創出のリーダーシップ」とすることにします。

これは、製薬業界の新規事業創出の営みの中で、どのような要素が重要となっているかを明らかにすることを目的としています。

以下では、より具体的な研究課題を設定していきます。

研究課題を設定する

先行研究が把握でき、研究テーマの大枠が決まってきたところで、より具体的な研究課題(リサーチクエスチョンと呼ばれることもあります)を設定していきます。

先ほどの例で、新規事業創出の営みの中で、どのような点に着目をするかを考えます。

研究課題と仮説を立てる

戦略や組織、人材などいろいろな要素はありますが、ここでは例えば、リーダーにどのような素質があると新規事業創出がされる(されやすい)か、としてみます。

以下でこの課題に対する仮説を設定していきます。

リーダーシップコア要素の観点

まずは、先行研究で議論されてきたリーダーシップの要素を基に仮説を立ててみます。

例えば、リーダーシップのコア三要素では、能力、人間性、一貫性が重要と言われており、さらにリーダーの能力では、「意思決定力」、「実行力」があげられております。

意思決定能力については、さらに以下のように詳細化されています。

組織目標の達成へと導く意思決定力は、フォロワーがリーダーに求める最も重要な能力要素である。この能力要素の有力な構成因子は「知識」、「論理的思考力」、および「胆力」からなると考えられる。

リーダーシップ論の展開とリーダーシップ開発論(2010:中村久人)

ここでは、「論理的思考力」や「胆力」というのがパッと見た感じでは、新規事業創出に特筆すべき影響があるかよくわからないので(胆力は失敗しても挑戦し続けるみたいな文脈であるかもしれませんが)、まずはわかりやすい「知識」をブレイクダウンしてみます。

例えば、製薬業界の新規事業創出では、

  1. リーダーの専門性が重要である
  2. リーダーの現場経験が重要である
  3. ………

などのように、リーダーのxxxが重要であると仮説を立てていくことができるでしょう。

カリスマ的リーダーシップの特性

また、例えば、世の中には様々なリーダーシップの形はあれど、新規事業を創出するようなリーダーはなにかしらのカリスマ的なリーダーシップを持っているはず、と考えたとします(本当はなぜそのように考えたかのロジックなども必要ですが)。

カリスマ的リーダーの行動特性として、以下の観点があります(2014;小野善生)。

  • 現状との関係
  • 将来の目標
  • 人に好かれるかどうか
  • 信頼性
  • 専門性
  • 行動
  • 環境への感度
  • 言明
  • 力の基盤
  • リーダー-フォロワーの関係

詳細な内容は末尾の参考文献から確認をしていただければと思いますが、例えばこの中で「環境への感度」や「力の基盤」の観点に着想を得て、製薬業界の新規事業創出では、

  1. リーダーの異業界への知識が重要である(環境への感度)
  2. リーダーの権威性が重要である(力の基盤)

などのような項目も考えられるかもしれません。

それ以外の視点は?

ここまではリーダーシップの特性について焦点を当ててきましたが、それ以外にも組織的な働きとして、リーダーとフォロワー間の関係性に着目をしてみるのもよいかもしれません。

あるいは、リーダーシップ理論ではなく、イノベーションの理論から着想を得るということもできると思います。

詳細には記載しませんが、イノベーションを促進するメカニズムについても様々な分析がされており、そこで提唱されている概念をベースにすることがでできるでしょう。

仮説を明らかにできるか

なお、非常に重要なことですが、仮説は明らかにすることが可能な問いを立てることが重要です。

イシューからはじめよ』という非常に良い本がありますが、どんなに学問的によい問いを設定することができても、検証に莫大な時間や費用がかかり、検証可能性が低い問いは、仮説として設定することは現実的ではありません。

特に大学院の場合は時間的な制約も大きいでしょう。

大学院は通常2年間ですし、最初の半年は研究よりも経営学の基礎的な実学(座学やグループワークなど)が多いでしょうから、実質的に研究に費やせるのは1年から1年半という期間かと思います。

新規性の付与の仕方を考える

ここまでざっくりと仮説を立てましたが、自分の研究内容に新規性があるのか?ということも重要になりますので、改めて確認することが必要です。

ただし、ここで気をつけておきたいのは、世の中に完全に新規なこと、というのは非常に少ないので、新規性という言葉に過度に悩む必要はないということです。

例えば、イノベーションという点では、野中郁次郎氏が多くの研究をしているところですが、その要素を、特定の業界にて検証するということも新規性という点では認められると思います。

野中氏は「知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である」と述べていますが、そのような理論を自分の所属する組織の実際のイノベーション事例に当てはめて分析し、どのように暗黙知を形式知化することができたか(できなかったか)、ということを明らかにすることにも価値はあるでしょう。

特に「失敗」に関しては、企業外部に情報が開示されることがほとんどありませんので、企業勤めの人が研究することで、価値が出せる可能性が十分にあると思います。

CASE 研究課題と仮説のまとめ

研究課題:製薬業界の新規事業創出では、リーダーにどのような素質があると成果に結びつくか(結びつきやすい)か?

研究仮説:製薬業界の新規事業創出では、

  • リーダーの専門性が重要である(知識)
  • リーダーの現場経験が重要である(知識)
  • リーダーの異業界への知識が重要である(環境への感度)
  • リーダーの権威性が重要である(力の基盤)

どのように研究をすすめていくか?

研究テーマ、研究課題・仮説が定まれば、研究をどのように進めていくかは、Howに当たる点なので比較的簡単に考えられるでしょう。

研究アプローチをデザインする

先に記載した内容ですが、基本的な研究アプローチは大きく2つあり、一つは、統計的にデータを収集・分析する手法、もう一つは事例研究(インタビュー含む)です。

これらは二律背反ではないので、研究の中で定量的に分析する部分と、定性的に分析する部分の双方を入れ込むようにするとよいと思います

一般的には、定量的なデータを取得する方が、大変な反面、研究としての重要度が高いようです。

業務経験との親和性の高いテーマを選択している場合、関係者などにアンケート調査をする、その領域の重要な権威者へのインタビューを設定する、あるいは社内の特定のデータを活用できそうなど、そういった内容を記載すればよいのではないでしょうか。

なお、研究課題・仮説については、指導教員とのブラッシュアップが必ず必要になってくる作業ですので(それがなければ指導を受ける必要性がないですよね)、この時点で、詳細なアンケート設計やインタビュー設計までできていなくても問題はないかなと考えています。

現時点での大仮説とそれを明らかにするための代表的な項目をいくつか挙げられれば良いと思います。

CASE 研究方法のデザイン

ここまで考えてきた製薬業界の新規事業のリーダーシップの例を考えてみます。

先に設定した、製薬業界の新規事業創出では、「リーダーの専門性が重要である」という仮説について考えてみます。

これを明らかにするために、専門性がどのような要素から構成されているかをさらに詳細に考える必要があるでしょう。例えば、専門性の構成要素は、学歴、大学・大学院での専攻、主な研究領域、これまでのキャリア、勤続年数…などがあるでしょう。

そのような要素を頭に入れつつ、自社の過去10年間に新規事業のリーダーを務めていた人物のバックグランドを分析することが考えられます。

なかなか難しいかもしれませんが、リーダーを務めた人数が多ければ、統計的な分析をしてどのような要素が事業創出につながったかを分析してみたり、あるいは自社で成功した新規事業の当時のリーダーやメンバーにアンケート調査やインタビューをするなどが考えられます。

研究計画書の書き方

ここまで、研究テーマの設定や研究課題・仮説の考え方についてまとめてきましたが、研究計画書のイメージが少しは持てたでしょうか?

研究計画書には、研究テーマそのものについての説明もですが、それに加えて問題意識を持った背景なども記載するケースが多いようです。

具体的に学校ごとにどのような内容が聞かれるのか、研究計画書の構成・書き方、論文としての言葉使いや引用の仕方などのお作法も含め、いくつか本を読んでみるといいと思います。

先日、おすすめ書籍はないかと、大学院受験を考えている友人から聞かれたので、半日ほど本屋で立ち読みをして20冊くらいの中から、最新のおすすめを見繕ってきました。

一言メモ!

実際に教鞭をとっている先生が執筆されており、論文の型(イントロダクションから、問題提起、まとめまで)をはじめとして、研究に関する重要な基礎が網羅されています。

一言メモ!

研究計画書が何かといった解説もありつつ、本書の大半は、学校ごとの研究計画書の実例が占めているため、どのような学校でどのようなことが聞かれているのか、また、どのように書いていいか迷っている人の参考になると思います。

一言メモ!

やや古いかつ、MBAをメインで書いているわけではないですが、研究がどういう営みなのかを改めて理解するのに役立つ一冊です。

その他にも、論文の書き方に関する書籍は、たくさんありましたが、その多くが、論文とレポートの違い、スケジューリングを設定するとか、簡単な言葉の使いかた(だ、である、を使うなど)がメインとなっており、研究計画についての執筆ボリュームが少なかったので、今回は、上記の3冊を選びました。

まとめ

出願時に先行研究を調べて、研究テーマや仮説をまとめておければ理想的ですが、なかなか難しい点もあると思います。

自分は、明確な研究テーマもなく、当然、先行研究への理解もありませんでしたが、幸運にも、大学院入試に通過することができ、その後、自分の研究したい領域を見つけて論文を書くこともできました。

経営学の社会人入試は、社会人としての実務経験なども評価されているので、そのあたりを強みとし、あきらめずに頑張ってみてください。

出願後に研究テーマが変わることも多々あるので(同じ研究室の友人は研究の実現性などからテーマを変えていました)、柔軟に考えていけるとよいと思います。

なお、本内容は大学院で研究をした自分が出願時、論文執筆時に知っておきたかった内容をまとめたものです。

アカデミックな観点から、正しい内容かと言われると不明な部分もありますが、この内容で修士論文を書いたので、大きな間違いはないのではないかと思います。参考程度にしていただければと思います。

また、本文中では、イメージがつきやすいように例をまじえて記載をしてきましたが、製薬業界やリーダーシップを専門としているわけではなく、先行研究などを調べながら簡易的にまとめたものなので、その点、ご留意ください。

今回はここまで~、読んでいただいた方、ありがとうございます!

関連記事

サイトで配信している学びに関する情報の全体像は以下の記事でまとめています。

参考文献

東京大学大学院経済学研究科修士課程学生募集要項補足説明書
http://www.student.e.u-tokyo.ac.jp/grad/2023M_hosokusetsumeisyo.pdf

2023年度京都大学大学院経営管理教育部(専門職学位課程)経営管理専攻 特別選抜・観光経営科学コース特別選抜 募集要項
https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/admissions/guidelines/21720/
https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/%E5%AD%A6%E4%BF%AE%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%9B%B8.pdf

2023 年度⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科 修⼠課程学⽣募集要項
https://www.sba.hub.hit-u.ac.jp/admission/guidebook/asset/7-1_2023.pdf

神戸大学大学院経営学研究科 専門職学位課程 現代経営学専攻 (専門職大学院)
https://mba.kobe-u.ac.jp/kobemba_wp/wp-content/uploads/2022/06/R5MBA_application_procedure.pdf

文部科学省
資料3 学術研究に関する整理
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/siryo/attach/1298587.htm

日本の製薬企業におけるイノベーション(2007:原拓志)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/abjaba/77/0/77_76/_pdf

リーダーシップ論の展開とリーダーシップ開発論(2010:中村久人)
https://www.toyo.ac.jp/uploaded/attachment/938.pdf

フォロワーの視点から見たカリスマ的・変革型リーダーシップ(2014:小野善生)
https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=9213&item_no=1&page_id=13&block_id=21



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