【社会人大学院入試】経営学(MBA) 修士論文のための研究計画書の書き方

研究計画書とはなにか?

研究計画書は、大学院へ出願時に必要となる書類で、自身が大学院入学後に取り組みたい研究内容についてまとめるものです。大学院入試では重要な要素の一つであるといわれております。

具体的には、研究テーマや研究テーマに取り組もうと考えた背景や問題意識、テーマに対してどのような仮説を持っているか、実際にどのような研究手法を用いて仮説を明らかにするのか、などを提示することだと考えています。

有名どころの経営系の大学院のホームページを見ると、研究計画書の提出が必要なところが多いようです。

東京大学大学院経済学研究科の場合

募集要項によると、経営学コースでも研究計画書の提出が求められています。

経営学コースの研究計画書は、A4 判の用紙を使用し、今後の研究テーマ、研究目的及び研究方法について、日本語の場合は 6 ページ程度(10,000 字程度)、英語の場合はダブルスペースで 9 ページ程度でまとめること。なお、本研究科に入学してから行う予定の研究計画について、これまでの準備状況が分かるように書くこと。

京都大学経営管理大学院の場合

募集要項によると、特別選抜(社会人選抜)では、学習計画書の提出が求められています。

学習計画書の設問4は、研究計画と同義と思います。

(設問4)
現代のマネジメントの課題は何か、自分がもっとも重要な課題であると考え、その解決のために関わっていきたいと考えている課題について説明しなさい。

一橋ビジネススクールの場合

募集要項によると、修士課程 経営学修士コース(経営管理プログラム) では、将来計画書の提出が求められています。

将来計画書の[⼊学後の計画]は、研究計画と同義と思います。

・この様式を表紙に⽤い、下記項⽬について、⽇本語で、合計 2,000 字程度で記述したものを、2 部作成してください。
・必ず、ステープラー等で左横の上下 2 箇所を綴じてください。
[志望動機]
[⼊学後の計画]
[修了後の計画]

神戸大学大学院経営学研究科現代経営学専攻の場合

募集要項によると、神戸大MBAでは、指定のフォーマットでの研究計画書の提出が求められています。

内容は、研究テーマの概要、研究の背景となる経験・資源、研究の進め方などです。

研究とは何か?

研究計画書を書く前に、まず大学での研究と言われる活動がどのようなものなのか理解しておく必要があると思います。

研究がどのようなものかを理解しつつ、研究計画書を作成しなければ、大学院入試で評価されないので注意が必要です。

経営学の研究は、企業経営の真理を追究すること

経営学は社会科学のひとつの分野であり、企業経営に関連する内容を科学的な方法で分析しています。科学するというのは、世の中の真理を追求する・事象の因果関係を明らかにするといったことであり、そのアプローチは大きく2つあります。

一つは、仮説に基づいて、統計的にデータを収集・分析する手法です。近年、特に欧米のビジネススクールを中心に、統計的な手法が主流になってきています。

もう一つは、特定の企業にフォーカスを当てて、詳細に観察をしていく手法です。事例研究、事例調査、ケーススタディなどと言われている手法で、特に日本では重要とされているアプローチです。

いずれにせよ、明らかにした真理を論文としてまとめます。

論文として重要な三要素

研究結果を論文としてまとめる際に重要な三要素は、論文の新規性、有効性、信頼性と言われており、以下で簡単に確認してきます。

新規性

新規性とは、自分のやろうとしている研究内容がこれまでの研究内容(先行研究)と比べて何かしらの点において目新しさがあるということです。

新規性を付与するには多様な観点があるので、全く新しいことをしなければ論文を書けないわけではないので工夫次第と思います。新規性については後述します。

有効性

有効性とは、研究内容が学術や産業の発展に何らかの意味で役立つか、貢献するかということです。

研究が、既存のものと比べて、部分的であれ、優れていることを示せるとよいでしょう。

信頼性

信頼性は、研究内容の論理構成などを含めて、再現性のある内容であり、信頼できるものであるということです。

研究デザインに関わる部分でもありますが、適切な検証デザイン(例えば、統計的な検証であれば、サンプル対象、サンプル数、データ処理の仕方など)を設計することなどが重要です。

なにを研究テーマとすべきか?

先行研究を調べる

論文には新規性が求められていることから、研究テーマを考えるには、まず先行研究を把握して、どのようなことが、どこまで明らかになっているのかを理解する必要があります。

簡単に先行研究を調べる方法を書いておきます。

文献データーベースを活用する

インターネットでも比較的多くの文献にアクセスすることができます。代表的なもので言えば、「CiNii」「Google scholar」「J-STAGE」などがあります。

他にもデーターベースはありますが、研究計画書を策定する上ではまずはこの3つくらいを調べて見るとよいと思います。

→データーベースの違いについてはこちら

データーベースで検索する際は、まずはレビュー論文などを検索するとよいかもしれません。

レビュー論文とは、特定のテーマに関する研究論文の概要や評価をまとめて記述している論文で、自身が関心のある領域についての論文がまとめられている可能性もあります。

指導教員に相談する

学部の生徒であれば指導教員に相談するというのは最も一般的な方法かと思いますが、社会人の方も、かつての指導教員や身の回りでアカデミア関係の仕事をしている人に相談するのもよいと思います。

入学後は、自分の研究テーマをブラッシュアップしていくために指導教員とのコミュニケーションは欠かせないでしょう。

研究テーマを考えるヒントは?

研究テーマは学術的価値のある領域でかつ自身の業務経験との親和性が高い領域とすることがよいと思います(以下は社会人としての実務経験を持つ人が、応募することを想定しています)。

社会人採用をしている大学院では、社会人としての実務経験を、学問の世界に還元することを期待されているので、そういった視点を大事にするとよいと思います。

学術的価値×業務経験の親和性の整理

なにを研究テーマとすればいいのか、わからないという人もいると思うので(自分もそうでした)、以下で、学術的価値(先行研究の有無)と業務経験との関連性の大小という観点で整理をしてみました。

以下で順に説明をしていきます。

箸にも棒にも掛からないテーマ

先行研究があり、自身の業務経験との関連性が低い研究テーマです。

先行研究を十分に調べていない、新しいことにチャレンジしたいといった人が、このような研究計画を書いてしまうケースがあります。

特に学術的な観点から、研究計画書での評価は厳しめになることが想定されるので、おすすめはできません。

取り組む価値が小さいテーマ

先行研究があり、自身の業務経験との関連性が高い研究テーマです。

先行研究をある程度把握しているが、例えばその内容に明らかな間違いがあり、それを指摘したいなどでしょうか?

新しい視点での検討や既存の研究内容を更新していくのであれば学術的価値はあるかもしれませんが、先行研究が十分にある場合、論文としてのインパクトは期待できないでしょう。

本気でアカデミックな世界で生きていくつもりのない人で、論文を書く必要性が迫られている人は選択する余地はあるかもしれません。。

チャレンジングなテーマ

先行研究がない(先行研究の限界から着想を得ている)ものの、自身の業務経験との関連性が低い研究テーマです。

新規性があるため学術的な価値は評価できますが、自身の経験との関連性が低いため研究に取り組むには難易度が高いでしょう。

そのテーマに取り組みたい強い動機があれば否定はしませんが、熱意だけでは論文は書けないので(例えば、実験、インタビュー、データ収集に協力してくれる組織や個人などの関係性が重要)、どのように研究していくかのアプローチ設計も含めて練り上げる必要があると思います。

強みを活かせるテーマ

先行研究がなく(先行研究の限界から着想を得ている)、自身の業務経験との関連性が高い研究テーマです。

自分の業務経験に基づくテーマのためベースとしての知見があり、検証のための取り組みも比較的容易であり、おすすめすべき領域です。研究中も軌道修正が比較的容易にできるでしょう(研究はうまくいかないことも多いので、随時見直していくことが求められます)。

 

例えば、あなたが、製薬業界の新規事業開発チームで部下10人をマネジメントしているとしましょう。その場合、研究テーマを「製薬業界における新規事業創出のリーダーシップ」という大枠で設定し、さらに詳細に研究課題を設定していくことが効果的かもしれません。

研究課題を設定する

先行研究が把握でき、研究テーマの大枠が決まってきたところで、より具体的な研究課題(リサーチクエスチョンと呼ばれることもあります)を設定していきます。

研究課題と仮説を立てる

先ほどの製薬業界の例では、研究テーマを「製薬業界における新規事業創出のリーダーシップ」としました。これは、製薬業界の新規事業創出の営みの中で、どのような要素が重要となっているかを明らかにすることを目的としています。

より具体的な研究課題では、新規事業創出の営みの中で、どのような点に着目をするかを考えます。戦略や組織、人材などいろいろな要素はありますが、ここでは例えば、リーダーにどのような素質があると新規事業創出がされる(されやすい)か、とします。

その際に、先行研究などで議論されてきたリーダーシップの要素などを基に仮説を立てることになります。

例えば、リーダーシップの三要素では、能力、人間性、一貫性が重要と言われているようですが、その中でリーダーの能力に焦点を当てたとします。

仮説として、製薬業界の新規事業創出では、

  1. リーダーの専門性が重要である
  2. リーダーの権威性が重要である
  3. リーダーの現場経験が重要である
  4. ………

などのように、リーダーのxxxが重要であると仮説を立てていくことができるでしょう。

なお、非常に重要なことですが、仮説は明らかにすることが可能な問いを立てることが重要です。

『イッシューからはじめよ』という非常に良い本がありますが、どんなに学問的によい問いを設定することができても、検証に莫大な時間や費用がかかり、実現可能性が低い問いは、仮説として設定することは現実的ではありません。

新規性の付与の仕方を考える

ここまでざっくりと仮説を立てましたが、自分の研究内容に新規性があるのか?ということも重要になりますので改めて確認することが必要です。

但し、ここで気をつけておきたいのは、世の中に完全に新規なこと、というのは非常に少ないので、新規性という言葉に過度に悩む必要はないということです。

例えば、イノベーションという点では、野中郁次郎氏が多くの研究をしているところですが、その要素を、特定の業界にて検証するということも新規性という点では認められると思います。

野中氏は「知識創造は暗黙知と形式知の相互変換運動である」と述べていますが、自分の所属する組織の実際のイノベーション事例を分析して、どのように暗黙知を形式知化することができたか、なども価値があるかもしれません。

どのように研究をすすめていくか?

研究テーマ、研究課題が決まれば、研究をどのように進めていくかは、Howに当たる点なので比較的簡単に考えられるでしょう。

冒頭に記載した内容ですが、研究アプローチは大きく2つあり、一つは、統計的にデータを収集・分析する手法、もう一つは事例研究(インタビュー含む)です。

業務経験との親和性の高いテーマを選択している場合、関係者にアンケート調査をする、その領域の重要な権威者へのインタビューを設定するなども十分に可能であり、そういった内容を記載すればよいと思います。

なお、仮説については、指導教員とのブラッシュアップが必ず必要になってくる作業ですので(それがなければ指導を受ける必要性がないですよね)、この時点で詳細なアンケート設計やインタビュー設計まではする必要がないと考えています。仮説を明らかにするための代表的な項目をいくつか挙げられれば良いと思います。

先ほどの製薬業界の例では、自社でこれまで成功した新規事業について、当時のリーダーやメンバーにアンケート調査やインタビューをするなどが考えられます。

まとめ・留意すべき点

ここまで研究計画書の書き方をまとめてきました。

出願時にしっかりと先行研究を調べて、研究テーマや仮説をまとめておければ理想的ですが、なかなか難しい点もあると思います。

自分は、明確な研究テーマもなく、当然、先行研究への理解もありませんでしたが、結果として、大学院入試に通過することができ、その後、自分の研究したい領域を見つけて論文を書くこともできました。

経営学の社会人入試は、社会人としての実務経験なども評価されているので、あきらめずに頑張ってみてください。

出願後に研究テーマが変わることも多々あるので(同じ研究室の友人は研究の実現性などからテーマを変えていました)、柔軟に考えていけるとよいと思います。

簡単な論文の書き方の本なども読んでみるといいと思います。

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自分が出願時には↓↓を読んでいました。

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今回はここまで~、読んでいただいた方、ありがとうございます!

 

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参考文献

東京大学大学院経済学研究科修士課程学生募集要項補足説明書
http://www.student.e.u-tokyo.ac.jp/grad/2023M_hosokusetsumeisyo.pdf

2023年度京都大学大学院経営管理教育部(専門職学位課程)経営管理専攻 特別選抜・観光経営科学コース特別選抜 募集要項
https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/admissions/guidelines/21720/

2023 年度⼀橋⼤学⼤学院経営管理研究科 修⼠課程学⽣募集要項
https://www.sba.hub.hit-u.ac.jp/admission/guidebook/asset/7-1_2023.pdf

神戸大学大学院経営学研究科 専門職学位課程 現代経営学専攻 (専門職大学院)
https://mba.kobe-u.ac.jp/kobemba_wp/wp-content/uploads/2022/06/R5MBA_application_procedure.pdf

 

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